実務対応報告38号にみる活発な市場が存在しない仮想通貨の減損について①

前回の記事において、活発な市場が存在する仮想通貨については時価評価をし、活発な市場が存在しない仮想通貨については取得原価で評価することを学びました。

今回の記事では、取得原価で評価する活発な市場が存在しない仮想通貨の収益性が低下した場合の会計処理について学んでいきます。

※なお、今回のテーマは非常に奥深いテーマであるため複数回に分けて記事を作成しています。

 

取得原価で評価する資産は数多くありますが、その収益発生形態により減損の会計処理が少しづつ違っている実態があります。そのため、実務対応報告38号だけの読み込みでは、活発な市場が存在しない仮想通貨の収益性が低下した場合の会計処理について適切な理解が得られない可能性があります。

そのため今回は、まず取得原価基準を採用する資産の減損会計について概観したうえで、実務対応報告38号の結論の理解を進めたいと思います。

 

取得原価主義と減損との不可分の関係

時価により資産評価を行う場合と異なり、資産の評価に取得原価主義を採用する場合には、資産から得られる収益が低下した場合にそれをどう評価額に反映するかという問題がつきまといます。

時価評価の場合は、毎期時価による評価を行うためリアルタイムに収益性の低下が反映されますが、取得原価によって評価した場合は、資産の収益性の変化とは原則無関係に取得原価による評価が毎期持続します。

したがって、収益性が著しく低下した場合には減損を行う事で収益性低下の実態を会計処理に反映させる必要があります。

すなわち、取得原価主義と減損会計には不可分の関係があるのですが、資産の種類によって減損の会計処理方法が微妙に異なる点を実務上は留意しなければなりません。

 

資産の種類と減損の会計処理方法の関係

では、資産の種類と減損処理の方法にはどのような関係があるのでしょうか?

以下、資産の種類とその投下資本の回収方法と言う観点から、減損の会計処理方法をまとめてみました。

 

取得原価によって評価する資産には、主に下記の4つがあります。

・固定資産

・債権

・時価の無い有価証券

・棚卸資産

 

そして、それぞれ下記のような投下資本の回収形態をとります。

・固定資産・・・使用による投下資本の回収

・債権・・・契約の履行を通じた投下資本の回収

・時価の無い有価証券・・・譲渡による投下資本の回収

・棚卸資産・・・販売による投下資本の回収

 

さらに各資産の収益性低下時の資産評価の方法としては

・固定資産・・・割引将来キャッシュフローによる使用価値または正味売却価額(のうち大きい方)

・債権・・・収益性低下後の回収額の割引将来キャッシュフロー

・時価の無い有価証券・・・株式の実質価額

・棚卸資産・・・正味売却価額

 

大きく分けると、固定資産や債券のような使用契約の履行といった資産に付随するキャッシュフローによって投下資本を回収する資産と、有価証券や棚卸資産のような売却によって投下資本を回収する資産に分かれます。(固定資産は売却によって回収することも可能ですが、あくまで例外的と考えます。)

 

そして、収益性低下を資産評価に反映する方法もこの投下資本の回収形態に依存していることが分かります。

固定資産や債券は、低下した収益性の程度を再評価するため将来キャッシュフローを用います。

これは、上記の資産の特徴が、資産に付随するキャッシュフローによって投下資本を回収するという点にあるためです。

 

一方、時価の無い有価証券や棚卸資産は、実質的な売却額を用いて収益性低下の程度を測定しています。

これは、上記の資産が、譲渡や販売といった対象資産の売却による投下資本回収が想定された資産であるためです。

 

活発な市場が存在しない仮想通貨の減損処理を考えるうえでも、取得原価で評価する資産特有の投下資本回収方法を理解することは非常に重要になります。

次回は、投下資本回収方法という観点から、活発な市場が存在しない仮想通貨の収益性が低下した場合のもっとも適当な会計処理を考えていくことにします。

(②へ続く)