ソフトウェア減価償却の開示について

今回は、長く続いたソフトウェアの会計処理のシリーズの最後となります。

今回は、自社利用ソフトウエアの減価償却及び、ソフトウェア減価償却の開示について解説をしていきたいと思います。

1.自社利用のソフトウェアの減価償却の方法

自社利用ソフトウエアの減価償却についてみていきます。

自社利用のソフトウェアについては、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきですが、一般的には、定額法による償却が合理的と考えられています。

償却の基礎となる耐用年数としては、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきですがが、実務上は原則として5年以内の年数とし、5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要とされます。(ソフトウェアは陳腐化が速いため耐用年数は短めに設定されています)


利用可能期間については、適宜見直しを行う必要があります。

利用可能期間の見直しの結果、例えば、新たに入手可能となった情報に基づいて当事業年度末において耐用年数を変更した場合には、以下の計算式により当事業年度及び翌事業年度の減価償却額を算定します。

⑴当事業年度の減価償却額 =当期首における未償却残高 ×当事業年度の期間/当期首における変更前の残存耐用年数

⑵翌事業年度の減価償却額 =翌期首における未償却残高 × 翌事業年度の期間/翌期首における変更後の残存耐用年数

過年度遡及会計基準第17項の会計上の見積りの変更に準じて、ソフトウェアの利用可能期間の見直しの結果、耐用年数の変更を要することとなった場合には、当事業年度及び当該ソフトウェアの残存耐用年数にわたる将来の期間の損益で認識します。

なお、耐用年数の変更について、過去に定めた耐用年数がその時点での合理的な見積りに基づくものでなく、これを事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、会計上の見積りの変更ではなく過去の誤謬の訂正に該当することに留意しましょう。

この自社利用のソフトウェアについては、各企業がその利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきではありますが、市場販売目的のソフトウェアに比し収益との直接的な対応関係が希薄な場合が多く、また物理的な劣化を伴わない無形固定資産の償却であることから、定額法が採用されました。


自社利用のソフトウェアの利用可能期間の見積りは、様々な要因により影響を受けるものであり、それぞれの見積り時点では最善の見積りであっても、時の経過に伴う新たな要因の発生等により変動することが予想されることから、適宜の見直しが求められます。

2.減価償却の開示について

ソフトウェアの減価償却の方法に関し、重要な会計方針として開示すべき項目及び記載上の留意点を解説していきます。


まず、 開示すべき項目としては以下となります。


① 市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法に関する開示
ア.市場販売目的のソフトウェアに関して採用した減価償却の方法
イ.見込有効期間(年数)


② 自社利用のソフトウェアの減価償却方法に関する開示
ア.自社利用のソフトウェアに関して採用した減価償却の方法
イ.見込利用可能期間(年数)


次に、 記載上の留意点としては下記となります。
⑴ソフトウェアの減価償却方法の変更は、会計方針の変更に該当する。
⑵見込有効期間及び見込利用可能期間の変更は、会計上の見積りの変更に該当する。

3.減価償却の方法に関する開示の考察

市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法は、当該ソフトウェアの性格に応じて最も合理的と考えられる償却方法を採用すべきであり、また、自社利用のソフトウェアの減価償却方法についても、各企業が、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる償却方法を採用すべきであると考えられています。


したがって、採用した減価償却の方法については、これを会計方針として記載することが適切です。


この場合、市場販売目的のソフトウェアの合理的な償却方法としては、見込販売数量に基づく方法のほか、見込販売収益に基づく償却方法も認められるが、いずれの償却方法を採用した場合においても、毎期の償却は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならないこととされているので、この償却額の下限についての取扱いは選択の余地がありません。

このため会計方針としての開示を要しないものとも考えられますが、見込販売数量(又は見込販売収
益)に基づく償却方法と一体として機能する方針と考えられる点を重視し、この償却額の下限についての取扱いも併せて記載することが適切との結論になりました。


また、見込有効期間の年数及び見込利用可能期間の年数についても減価償却の方法の記載に併せて記載することが適切です。


過年度遡及会計基準第19項及び第20項並びに第62項において、無形固定資産の償却方法は会計方針として位置付けることとされていますが、その変更は会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するものとされています。

このため、会計上の見積りの変更と同様に会計処理を行い、その遡及適用は行わず、また、会計方針
の変更に関する注記については、過年度遡及会計基準第11項(1)、(2)及び第18項(2)に定める事項を記載することになります。


なお、見込有効期間及び見込利用可能期間の変更は、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することであるため、その影響が重要である場合には、過年度遡及会計基準第18項に定める事項を記載することになります。