レベル別のインプットについての解説

今回も、新たな時間基準等について解説をしていきたいと思います。

時価算定会計基準および時価算定適用指針が新たに定められましたが、この背景には国際的な会計基準とのコンバージェンスがあります。

国際会計基準をはじめとする海外の会計基準に時価のレベルに関する概念が取り入れられたことを踏まえ、時価開示適用指針において、金融商品の時価のレベルごとの内訳等について開示をすることが新たに求められるようになりました。

また、従来開示が求められてきた時価の算定方法については、時価算定会計基準および時価算定適用指針の内容を踏まえて、より具体的に、時価の算定に用いた評価技法およびインプットの説明を記載することが必要となりました。

中でも『インプット』に着目したレベル別の開示については、多くの企業で適用されるため実務上の重要性も高く、経理担当者や監査人は必ず理解をしておかなければならない基準となります。

1.算定に必要な時価について

時価を算定するにあたっては、市場における通常の日次取引高では売却できないほどに金融商品を大量に保有している場合であっても、当該金融商品を一度に売却する際に生じる価格の低下についての調整を行わない。当該金融商品が活発な市場で取引されている場合には、個々の資産又は負債の活発な市場における相場価格に保有数量を乗じたものを時価とする。

次に述べるレベル 1 のインプットを用いる場合を除き、他の企業の持分を支配するにあたって市場参加者である買手が支払う追加的な金額である支配プレミアム等、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に考慮する特性を時価の算定に反映する必要があります。

2.レベル 1 のインプット

レベル 1 のインプットとは、時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないものをいいます。


当該価格は、時価の最適な根拠を提供するものであり、当該価格が利用できる場合には、原則として、当該価格を調整せずに時価の算定に使用します。

時価を算定する資産又は負債に買気配及び売気配がある場合、その資産又は負債の状況を考慮し、買気配と売気配の間の適切な価格をインプットとして用います。これは、実務上の簡便法として用いられる仲値等の利用を妨げるものではありません。

レベル 1 のインプットは、次の両方を評価して決定します。


(1) 当該資産又は負債に係る主要な市場、あるいは、主要な市場がない場合には、当該資産又は負債に係る最も有利な市場


(2) 当該資産又は負債に関する取引について、時価の算定日に企業が主要な市場又は最も有利な市場において行うことができる場合の価格

レベル 1 のインプットに対する調整は、次の(1)~(3)の場合にのみ認められます。

レベル 1 のインプットについて調整する場合には、調整により算定された時価は、レベル2 の時価又はレベル 3 の時価に分類されることに注意が必要です。


(1) 類似の資産又は負債を大量に保有しており、当該資産又は負債について活発な市場における相場価格が利用できるが、時価の算定日において個々の資産又は負債について相場価格を入手することが困難な場合


(2) 活発な市場における相場価格が時価の算定日時点の時価を表さない場合

(3) 負債又は払込資本を増加させる金融商品について、活発な市場で資産として取引されている同一の金融商品の相場価格を用いて時価を算定する場合で、かつ、当該相場価格を調整する場合

3.レベル 2 のインプット

レベル 1 のインプットでないものの、資産又は負債の契約期間のほぼ全体を通じて観察可能であるインプットは、レベル 2 のインプットとなります。レベル 2 のインプットには、次のようなものが含まれます。


(1) 活発な市場における類似の資産又は負債に関する相場価格
(2) 活発でない市場における同一又は類似の資産又は負債に関する相場価格
(3) 相場価格以外の観察可能なインプット
(4) 相関関係等に基づき観察可能な市場データから得られる又は当該データに裏付けられるインプット

時価の算定にとって重要なレベル 2 のインプットを調整するにあたって、重要な観察でないインプットを使用する場合には、算定される時価はレベル 3 の時価に分類される可能性がある点には注意が必要です。

4.レベル 3 のインプット

レベル 3 のインプットを用いるにあたっては、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定を反映します。この際、合理的に入手できる市場参加者の仮定に関する情報を考慮する点には注意が必要です。

なお、レベル 3 のインプットを決定するにあたっては、その状況において入手できる最良の情報を用いなければなりません。

この際、企業自身のデータを用いることができますが、合理的に入手できる情報により次のいずれかの事項が識別される場合には、当該企業自身のデータを調整する必要があります。


(1) 他の市場参加者が異なるデータを用いること
(2) 他の市場参加者が入手できない企業に固有の特性が存在すること