レベル 1~3 の時価の時価に関する注記①
21年4月1日以後開始する事業年度から原則適用が開始された時価開示適用指針において、金融資産及び金融負債について、適切な区分に基づき、レベル 1 の時価の合計額、レベル 2 の時価の合計額及びレベル 3 の時価の合計額をそれぞれ注記するよう改正がなされました。
今回は、この新たな開示について改めて解説をしていきたいと思います。
1.開示の対象となる金融商品
時価開示適用指針によれば、下記のような金融商品が開示対象となります。
①時価をもって貸借対照表価額とする金融資産及び金融負債
② ①には該当しないものの、貸借対照表の科目ごとに貸借対照表日における時価を注記するような金融資産及び金融負債
こうした情報は、時価の相対的な客観性や信頼性に基づいて分類した金融商品の残高を示すものです。
そして、財務諸表利用者にとって企業の保有する金融商品を評価するうえで有用であ ると考えられるため、注記を求めることされました。
この時価のレベルについては時価の相対的な客観性や信頼性を意味するものです。
時価のレベル間の振替の情報が伴うことにより、市場流動性に関する情報を提供する可能性もあると考えられます。
2.用語説明(インプット)
時価注記の基準や適用指針を理解するうえで重要な概念となるのが、『インプット』という用語です。
まずは、この用語について解説していきたいと思います。
時価注記でいう「インプット」とは、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定(これには時価の算定に固有のリスクに関する仮定を含みます。)をいいいます。
インプットには、相場価格を調整せずに時価として用いる場合における相場価格も含まれます。
インプットは、次の観察可能なインプットと観察できないインプットにより構成されます。
まず、 「観察可能なインプット」とは、入手できる観察可能な市場データに基づくインプットをいいます。
一方で、 「観察できないインプット」とは、観察可能な市場データではないものの、入手できる最良の情報に基づくインプットをいいいます。
3.時価の算定に用いた評価技法とインプットの注記の留意点
前述のように適用指針では、貸借対照表の科目ごとに貸借対照表日における時価を注記する金融資産及び金融負債について、時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明を注記することを求めています。
この情報は、企業の時価の算定方法に関する具体的な情報を提供するするという観点から有用と考えられるため、注記が求められています。
また、時価の算定に用いる評価技法又はその適用を変更する場合は、会計上の見積りの変更として処理します。
留意点としては、この時価算定の評価技法等の変更の場合、会計上の見積の変更注記は不要となりますが、変更の旨及び変更の理由のみについて注記する必要があります。
3.レベル別のインプット
続いて、新たに時価注記で求められることとなったレベル別のインプットについて説明をしていきたいと思います。
なお時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用します。
なお、レベル 1 のインプットが最も優先順位が高く、レベル 3 のインプットが最も優先順位が低いという関係になっています。
①レベル 1 のインプット
レベル 1 のインプットとは、時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないものをいいます。(なお、「活発な市場」とは、継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量及び頻度で取引が行われている市場のことをいいます。)
この価格は、時価の最適な根拠を提供するものであって、当該価格が利用できる場合には、原則として、当該価格を調整せずに時価の算定に使用されるものです。
②レベル 2 のインプット
レベル 2 のインプットとは、資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル 1 のインプット以外のインプットをいいます。
③レベル 3 のインプット
レベル 3 のインプットとは、資産又は負債について観察できないインプットをいいます。
当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いられるものです。
上記のようなインプットを用いて算定した時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル 1 の時価、レベル 2 の時価又はレベル 3 の時価に分類されます。
なお、時価を算定するために異なるレベルに区分される複数のインプットを用いており、これらのインプットに、時価の算定に重要な影響を与えるインプットが複数含まれる場合には、これら重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類することになります。
新たに改正された時価基準には、この他にも様々な論点があります。
非常に分かりにくいものでもありますので、引き続き次回以降も解説をしていきたいと思います。