サブリースに関する公開草案の位置づけ①
前回に引き続き、2023年5月2日に企業会計基準委員会より公表された企業会計基準公開草案第 73 号「リースに関する会計基準(案)」等及び企業会計基準適用指針公開草案第 73 号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」に関する解説をしていきたいと思います。
今回のテーマは『サブリース』です。
サブリースは、オーナーからサブリース会社が不動作を一括で借り上げ運用を行うスキームで、スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件(※)などで一時期社会問題となりました。
(※)かぼちゃの馬車事件
「賃料30年保証、利回り8%」という触れ込みで1棟1億円の「かぼちゃの馬車」をスルガ銀行が融資して不動産投資家に販売したものの、サブリース会社が数年で破綻し、ローン返済ができなくなった投資家が続出した事件
上記のような社会問題化した事件のせいなどもあって悪いイメージもあるサブリースですが、そのスキーム自体に問題がある訳ではなく、上場企業においても利用されるケースは普通にあります。
今回のリース基準の改正においても利用が広がるサブリース取引実務の実情を反映し、サブリースの会計処理について整理がされています。
1.サブリース取引の定義
まずは、サブリース取引の定義について見てきます。
企業会計基準適用指針公開草案第 73 号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」によればサブリースとは、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引となっています。
また、当初の貸手と借手の間のリースを「ヘッドリース」といい、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」といいます。
2.サブリースの会計処理
次にサブリース取引の会計処理について説明します。
サブリース取引における中間的な貸手は、ヘッドリース(当初のリース取引をヘッドリースといいます)について借手のリースの会計処理を行います。
そして、サブリースについては、サブリースがファイナンス・リースとオペレーティング・リースのいずれに該当するかによってどのような会計処理をするかが決まります。
(1) サブリースがファイナンス・リースに該当する場合には、サブリースのリース開始日に、次のような会計処理を行います。
① サブリースした使用権資産の消滅を認識します。
② サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産又はリース債権を計上します。
③ 計上されたリース投資資産又はリース債権と消滅を認識した使用権資産との差額は、損益に計上します。
(2) サブリースがオペレーティング・リースに該当する場合には、サブリースにおける貸手のリース期間中に、サブリースから受け取る貸手のリース料について、オペレーティング・リースの会計処理を行います。
3.現在価値の算定
リース料の現在価値の算定を行う場合には、次の(1)の金額が(2)の金額と等しくなるような利率を用います。
(1) サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額
(2) 使用権資産に係るサブリースのリース開始日に現金で全額が支払われるものと仮定した場合のリース料。このとき、当該リース料は、サブリースを実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が行うと想定した場合のリース料(独立第三者間取引における使用権資産のリース料)とします。(当該利率の算出が容易でない場合、ヘッドリースに用いた割引率を用いることができます。)
また、当該リース料の算定にあたっては、サブリースがヘッドリースのリース期間の残存期間にわたって行われるものと仮定します。
これは、リース取引は金融取引であることを前提とするので、資産を購入した場合とリースした場合とで生じるトータルの割引後のキャッシュフローに理論上の違いはないと考えると上記の⑴と⑵は一致するはずです。
したがって、購入に相当する⑵のキャッシュフローとリースに相当する⑴のキャッシュフローが一致するような割引率が、リース料の現在価値算定に用いる割引率ということになります。
4.ファイナンス・リースと判定される場合
最後に、ファイナンス・リースの判定について見ていきたいと思います。
次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、中間的な貸手のサブリースはファイナンス・リースと判定されます。
(1) 現在価値基準
サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が、独立第三者間取引における使用権資産のリース料の概ね 90 パーセント以上であること
(2) 経済的耐用年数基準
サブリースにおける貸手のリース期間が、ヘッドリースにおける借手のリース期間の残存期間の概ね 75 パーセント以上であること(ただし、上記(1)の判定結果が90 パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除きます。)
※旧リース基準と非常に似通った内容であるため理解は難しくないと思います。
なお、ヘッドリースについて短期リース又は少額リースに関する簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合には、サブリースはオペレーティング・リースに分類します。