金融商品基準と第三者から入手した相場価格の利用
引き続き、時価基準と適用指針の解説をしていきます。
前回の特殊ケースの続きで、第三者から入手した相場価格の利用について解説をしていきますが、これを理解するためには金融商品に関する知識が必要不可欠となりますので、そちらについても解説をしていきます。
1.第三者から入手した相場価格の利用について
取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができるとされています。
資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下していると判断した場合には、第三者から入手した相場価格が秩序ある取引を反映した現在の情報に基づいているかどうか又は市場参加者の仮定を反映した評価技法に基づいているかどうかを評価して、当該価格を時価の算定に考慮する程度について判断することになります。
一方で上記の定めにかかわらず、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団においては、第三者が客観的に信頼性のある者でその企業集団から独立した者で、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル 2 の時価に属すると判断される場合には、次のようなデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができるとされています。
(1) インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
(2) インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約又は通貨スワップ
なお、オプションを含むような取引については、利用されるボラティリティの種類によってはレベル 3 の時価に分類されると考えられるため、適用の対象外となります。
2.基準の用語説明
続いて、各用語について説明をしていきます。
【デリバティブ】
デリバティブとは「金融派生商品」とも呼ばれ、通貨、株式、債券などの原資産から派生した取引の総称です。
金融商品には株式、債券、預貯金・ローン、外国為替など様々なものがありますが、これら金融商品のリスクを低下させたり、リスクを覚悟して高い収益性を追求したりする手法として考案されたのがデリバティブです。
デリバティブ取引には「先物取引」「為替予約」「オプション取引」「スワップ取引」などの種類があります。
【先物取引】
先物取引とは、ある商品(原資産)を、将来の決められた日(期日)に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引のことです。
現時点では、売買の価格や数量などを約束だけしておいて、将来の約束の日が来た時点で、売買を行います。
前もって売買の価格を決めておくことができるので、価格変動する商品の売買につきものの、価格変動リスクを回避できるという利点があります。
【為替予約】
為替予約は、将来において外国通貨を購入するあるいは売却する価格(予約レート)、数量を現時点で契約する(予約する)取引をいいます。
この取引を使うと、将来時点における外国為替相場の状況によらず、予約した条件で外国通貨の受け渡しが履行されますので、その後の外国為替相場の変動の影響を受けなくてすむようになります。
【オプション取引】
オプションとは「権利」のことであり、オプション取引とは、将来の決められた期日(満期日)にあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で原資産を買付ける、または売付ける「権利」を売買する取引です。原資産を「買う」権利のことを「コールオプション」、「売る」権利のことを「プットオプション」といいます。
【スワップ取引】
スワップは「交換」を意味する言葉ですが、金融取引の分野においては、金融機関同士が互いに将来発生する金利債務などのキャッシュフローを交換する取引のことをいいます。
例えば、固定金利債務を抱える者と変動金利債務を抱える者が、元本はそのままにして、双方合意の下、支払う金利だけを交換し、それぞれ相手の金利を肩代わりして支払う金利スワップなどがあります。
3.金融商品基準における金利スワップの取扱い
最後に、時価基準とも関連の深い金融商品基準におけるスワップの取扱いについて見ていきます。
金融商品基準においては、資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を充たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができるとされています。
これは煩雑な手続を経て時価評価せずとも、スワップした後の利息の受払のキャッシュフローはいずれにしても固定されるため、時価評価により将来キャッシュフローの変動を財務諸表に反映させる必要はないと考えられるからです。