会計方針の定義とは何か

今回は、『会計方針の変更』という概念について、シリーズで解説をしていきたいと思います。

今回のシリーズを開始するに当たり、会計方針という概念や、この概念がどこから出てきたかについて説明をしていきたいと思います。

1.会計方針の変更が求められるようになった背景について

まずは歴史的背景から説明していきたいと思います。

平成11年に定められてた監査委員会報告第 65 号「正当な理由に基づく会計方針の変更」においては、会計基準及び法令の改正等(「会計基準等の改正」)に伴って会計処理の原則又は手続を変更する場合には、特定の会計処理の原則又は手続の採用が強制され、他の原則又は手続を任意に選択する余地がないときは、会計処理の原則又は手続の変更が行われるものの、正当な理由による会計方針の変更には該当せず、追加情報として取り扱われてきました。

これは、会計方針の変更があっても、遡及して財務諸表が修正されることもなく追加情報にこれが反映されるだけであったことを示しています。


ところが平成 14 年1月の監査基準の改訂において、それまで正当な理由による会計方針の変更として取り扱われていなかった会計基準等の改正による会計処理の原則又は手続の変更が、正当な理由による会計方針の変更に該当するとされたことを受けて、当協会は正当な理由による会計方針の変更についての考え方の見直しを行い、上記の監査委員会報告第 65 号「正当な理由に基づく会計方針の変更」を廃止し、これに代わる新たな実務指針として平成 15 年3月に「監査・保証実務委員会実務指針第 78 号『正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い』」を公表しました。


またこれに続いて、企業会計基準委員会から、平成 21 年 12 月に企業会計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」が公表されることになりました。

過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針は、企業会計基準委員会における会計基準の国際的なコンバージェンスの取組みの中で、国際的な会計基準で見られるような、会計方針の変更、表示方法の変更及び誤謬の訂正が行われた場合の過去の財務諸表の遡及処理に関する取扱いを定めています。

また、従来からの中間財務諸表と年度財務諸表との会計処理の首尾一貫性についての考え方を踏まえて、正当な理由による会計方針の変更にあたり留意すべき事項の検討も行われました。


これらの改正によって、現行実務で行われている会計方針の変更や会計上の見積の変更などの処理が整理されました。

2.主要な用語の定義

本シリーズにおいて会計方針の変更や会計上の見積について解説をしていきますが、まずここでは用語の定義を見ていきたいと思います。

(1) 「会計方針」とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいいます。
(2) 「表示方法」とは、財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法(注記による開示も含
む。)をいい、財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれます。
(3) 「会計上の見積り」とは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合にお
いて、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをい
います。
(4) 「会計上の変更」とは、会計方針の変更、表示方法の変更及び会計上の見積りの変更をい
います。過去の財務諸表における誤謬の訂正は、会計上の変更には該当しません。
(5) 「会計方針の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他
の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいいます。
(6) 「表示方法の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他
の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいいます。
(7) 「会計上の見積りの変更」とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸
表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいいます。
(8) 「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入
手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤
りをいいます。
① 財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り
② 事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り
③ 会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り
(9) 「遡及適用」とは、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会
計処理することをいいます。
(10) 「財務諸表の組替え」とは、新たな表示方法を過去の財務諸表に遡って適用していたかの
ように表示を変更することをいいます。
(11) 「修正再表示」とは、過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映することをい
います。