暗号資産を支払手段とした販売取引の会計処理について

暗号資産を支払手段とした販売取引の会計処理に関する会計基準について

暗号資産を支払手段とした販売取引(役務の提供・物品の販売)は、多くの企業や店舗で既に導入されており、価値の貯蔵手段としてだけでなく、決済手段としても浸透しつつあります。

暗号資産による決済はキャッシュレス決済が基本となり、かつ海外旅行をする際などは暗号資産を使用することで自国の通貨から日本円に両替せずに買い物ができるため、非常に便利な支払手段となっています。

暗号資産の会計処理等を定めた「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告38号、以下「実務対応38号」といいます。)では、企業が暗号資産を支払手段として販売取引(役務の提供・物品の販売)をする場合の会計処理は定められていません。

また、既存の会計基準である「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号、以下「会計基準29号」といいます。)では、暗号資産に関する取引と当該会計基準等の関係について見直すべきという意見があり審議が行われた結果、現在では暗号資産に関する取引は当該会計基準等の適用外となっています。

とはいえ現状では暗号資産の収益認識に関する会計基準はないため、実務上は、暗号資産の取引に関する会計処理をするにあたり会計基準29号や企業会計原則を参照にしつつ収益認識することになると思われます。

収益認識に関する会計基準における考え方

会計基準29号では、以下のように定められています。

「企業は約束した財又はサービス(本会計基準において、顧客との契約の対象となる財又 はサービスについて、以下「資産」と記載することもある。)を顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてである。」(会計基準29号㉟)

つまり、暗号資産を支払手段とした販売取引は、顧客に販売対象の資産が移転し、履行義務が充足した時点で収益が認識されます。

例えば家電量販店で家電を販売した場合(暗号資産による決済)、家電を顧客に引き渡しその対価として暗号資産を受け取った時点で、当該家電量販店は収益を認識することになります。

また、計上金額については、会計基準29号では以下のように定められています。

「契約における対価が現金以外の場合に取引価格を算定するにあたっては、当該対価を時価により算定する。」(会計基準29号59)

つまり、販売時点の暗号資産の時価によって計上金額は決定され、販売後の暗号資産の時価の変動は、当該販売取引の収益計上金額に対し影響を及ぼしません。(その後の価格変動については、資産価値の変動として営業外損益として認識されます。)

なお、企業が受け取った暗号資産の会計処理については、暗号資産の会計処理についてを参照してください。