個人事業主による暗号資産クラウドファンディングと暗号資産交換業の可否

暗号資産が市民権を得るにしたがい、クラウドファンディングを暗号資産で行った場合の税務処理の質問を受けたり、暗号資産交換業を個人で行いたいというような相談を寄せられることが多くなってきました。

今回は、こうした個人事業主の暗号資産取引のマイナーな税務処理に関してまとめてみました。

1.暗号資産でクラウドファンディングを行う場合の論点整理

フリーランスで収入を得ている個人が、地域振興のためのイベントを開催するためクラウドファンディングで資金を募集しました。募集はビットコインで行われ、プロジェクト成立後にビットコインで入金されました。

こうした場合のビットコインの収入はどのように記帳し、事業所得はどのように計算すればよいのでしょうか?

まず、購入型のクラウドファンディングにおける会計処理を検討する上で論点整理をしていきます。

ポイントは、認識と測定です。

認識とは、収益を『いつ』認識するかで、測定とは、収益を『いくら』で測定するかです。

2.暗号資産でクラウドファンディングを行う場合の税務処理

まず『認識』について見ていきます。

会計上のルールと同様、所得税法上及び法人税法上もプロジェクト成立による入金時は前受金処理、 プロジェクト実施完了時に売上計上となります。

つまり、プロジェクト成立によるビットコインの入金時は前受金で処理します。そして、クラウドファンディングの目的としたイベントが開催された時点で売上に計上します。

次に、『測定』について見ていきます。

測定の論点で問題になるのは円貨換算の方法です。暗号資産でクラウドファンディングが行われた場合、入金された金額を対価とする売上取引となりますが、暗号資産建ての入金となるため円建てによる売上金額が明示的に示されないという問題が生じます。

所得税基本通達57の3-2によれば、外貨建てによる売上取引の円貨換算額は、取引日のレートを用いるとあります。

また、同通達57の3-5には、前受金計上時のレートにより売上計上し、売上計上時点でのレートにより再度の円換算は行わないことができるとされています。

つまり所得税及び法人税の取り扱いとして、前受金を売上に振り替える処理をする際の振替時のレートによる再度の円貨換算は省略することができます。

この所得税基本通達57の3-5の処理が認められている理由ですが、これは計算上この換算にあまり意味がなくなるケースが多いためです。

たとえば前受金受領時から売上計上時に向けてレートが上がった場合、売上は増加しますが同額の換算差損が計上されて相殺されます。逆にレートが下がった場合、売上は減少しますが同額の換算差益が計上されて相殺されます。

このようにどちらの方法を採用しても影響がないためこのような取り扱いが認められています。

しかしながら、 所得税の計算においては、換算差損益が生じる原則処理と、簡便的に前受金の振替のみの特例処理とでは、課税売上の金額が異なることがあります。

外貨よりも相場の変動が激しいビットコインなどの暗号資産の場合、どちらの方法を採用するかによって 一定の金額操作が可能となってしまう余地があるため、原則処理と特例処理のどちらを選択した場合でも継続適用を行う必要があります。

また、今回は購入型のクラウドファンディングを想定していましたが、寄附型のクラウドファンディングにより暗号資産を受領した場合は、法人から寄附を受領したときは 「一時所得」、 個人から寄附を受領したときは「贈与税」 の論点が生じるケースがあるので、必ず税理士などの専門家に相談しましょう。

3.個人事業主は暗号資産交換業ができるか?

個人事業者が暗号資産の「取引所」や「交換所」の業務まで考えたいというようなケースがあると思いますが、可能なのでしょうか?

結論から言うと、個人事業者は「暗号資産交換業者」として金融庁・財務局の登録を受けることができないため、暗号資産交換業を行うことができません。

暗号資産交換業とは、資金決済法において、「暗号資産と法定通貨または暗号資産同士の交換(交換の媒介、取次等を含む)」や「交換に際して利用者の金銭・暗号資産を管理する業務」とされています。

暗号資産交換業を行う者は、金融庁・財務局に「暗号資産交換業者」として、2017年4月1日から登録が必要となりました。

この「暗号資産交換業者」の登録制度は、マネー・ローンダリング対策や、利用者保護を目的として、資金決済法や犯罪収益移転防止法の改正による法制度の整備を行ったもので、個人事業主にこれを認めると活動実態の捕捉が難しく、実質的な規制逃れが可能になり兼ねないため認めていないと思われます。

4.暗号資産交換業者の要件

具体的には、日本国内において暗号資産交換業を行う事業者は、登録を受けるにあたり、次のような要件を満たす必要があります。

・株式会社であること

・資本金が1,000万円以上、純資産がマイナスでないこと

・暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制が整備されていること

他にも要件がありますが、「暗号資産交換業者」の登録にあたり、少なくとも「株式会社であること」が必要です。

個人事業者は金融庁・財務局の登録を受けることができず、現行法において暗号資産交換業を行うことができませんので、個人事業主が暗号資産交換業を行う事はできません。

5.参考条文等について

今回のコラムで使用した参考条文等を以下に

(所得税基本通達57の3-2 、57の3-5(抜粋))

(外貨建取引の円換算)

57の3-2 法第57条の3第1項(外貨建取引の換算)の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下「電信買相場」という。)の仲値(以下「電信売買相場の仲値」という。)による。

ただし、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費(原価及び損失を含む。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。

(前渡金等の振替え) 57の3-5   57の3-2により円換算を行う場合において、その取引に関して受け入れた前受金又は支払った前渡金があるときは、当該前受金又は前渡金に係る部分については、57の3-2にかかわらず、当該前受金又は前渡金の帳簿価額をもって収入又は経費の額とし、改めてその収入又は経費の計上を行うべき日における為替相場による円換算を行わないことができるものとする。

(参考)政府広報オンライン「暮らしに役立つ情報」平成30年(2018年)5月18日

(資金決済法第63条の2、第63条の3)

(暗号資産交換業者の登録)

第63条の2 暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

(登録の申請)

第63条の3 前条の登録を受けようとする者は、 内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。

一 商号及び住所

二 資本金の額

三 暗号資産交換業に係る営業所の名称及び所在地

四 取締役及び監査役(監査等委員会設置会社にあっては取締役とし、指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役とき、外国暗号資産交換業者にあっては外国の法令上これらに相当する者とする。第63条の5第1項第11号において同じ。) の氏名

五 会計参与設置会社にあっては、会計参与の氏名又は名称

六 外国暗号資産交換業者にあっては、国内における代表者の氏名

七 取り扱う暗号資産の名称

八 暗号資産交換業の内容及び方法

九 暗号資産交換業の一部を第三者に委託する場合にあっては、当該委託に係る業務の内容並びにその委託先の氏名又は商号若しくは名称及び住所

十 他に事業を行っているときは、 その事業の種類

十一 その他内閣府令で定める事項

2 前項の登録申請書には、 第35条1項各号に該当しないことを誓約する書面、財務に関する書類、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類その他の内閣府令で定める書類を添付しなければならない。