新収益認識基準概説

コンバージェンス(日本の会計基準を国際的な会計基準に合致させること)が言われて久しいですが、すべての業種・取引に適用する包括的で単一モデルに基づく新しい収益認識基準として発表されたIFRS第15号についてのか考え方が、日本でも導入されることになりました。

 

IFRS第15号の考え方を取り入れた『収益認識に関する会計基準』について、包括的に解説していきたいと思います。

 

1.収益認識基準導入の背景

これまでの収益認識基準は企業ごとに「出荷基準」や「検収基準」など、異なるタイミングで収益の計上をしており、結果として企業ごとで異なる基準で収益計上をしているという実態がありました。

 

しかし、売上に代表される「収益」は、企業の財務諸表を利用する利害関係者が最も注目する財務指標の一つです。

 

売上高(収益)は、いわば本業から稼がれた収入の金額であり、企業の経営成績を分析する際に非常に重要な指標にも関わらず、「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかのルールが定まっていないため、収益に関する包括的な会計基準が必要とされるようになった次第です。

 

また実務的な側面として、米国基準における業種別又は取引別のガイダンス間には不整合があったことや、IFRSは理解が難しく原則に一貫性がなかったことなどの問題も挙げられます。

 

収益認識基準は、特定の企業・業種に限定するのではなく、様々な営業形態を含むすべての会社へ適用されることが想定されています。

 

そのため、細かい個別の取引や状況に対応する会計処理は定められておらず、抽象的にしか会計処理が定められていません。

 

一方で収益認識基準は、判断の要素が大きく実務への適用がより困難な面があります。

しかし、重要なのは収益認識基準の背後にある考え方を正しく理解し、適切な判断を行うことで、内容さえきちんと理解すれば、より比較可能性が高く、実態を反映した会計処理を行えるはずです。

 

2.収益認識基準の5ステップ

収益認識会計基準では、財又はサービスの顧客への移転を履行義務という形で認識した上で、その財又はサービスと交換に企業が権利を得るであろう対価の額を、履行義務に対して配分することで収益の認識を行います。

収益認識は次の5つのステップを適用します。

 

ステップ1:契約の識別

ステップ1では、顧客との契約を識別します。契約は、具体的には下記の要件を満たす必要があります。

 

⑴契約当事者が契約内容を承認し、義務の履行を約束していること

⑵当事者の権利を識別できること

⑶支払条件を識別できること

⑷契約に経済的実質があること

⑸対価を回収する可能性が高いこと

 

また、同一の顧客と同時に締結した複数の契約について契約を結合し、単一の契約とみなすことがありますし、契約変更した場合に独立した契約として処理することもあります。

 

ステップ2:履行義務の識別
契約における取引開始日の顧客との契約(財又はサービス)を履行義務として識別します。

 

顧客に約束した財又はサービスは、次のⅰ及びⅱのいずれも満たす場合には、別個のものとして考えます。

 

⑴当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること
(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)

 

⑵当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること
(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)

 

いずれも基準の文言通りの表現ですが、もう少し分かりやすく言えば、財・サービス(とその履行義務)を明確に区別できて、かつ、その区別した財・サービス(とその履行義務)が単独で何らかの便益を生む効果があるのであれば、その財・サービス(とその履行義務)を収益認識の最小単位とするというものです。

 

ステップ3以降で、この識別した履行義務に対して対価を配分するので、このステップ2は非常に重要となります。

 

ステップ3:取引価格の算定
取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額です。

これには、第三者のために回収する額(例えば当社が代理人となるような取引形態を想定)は含まないので注意が必要です。

取引価格を算定する際には、次の⑴~⑷の影響を考慮します。

 

⑴変動対価(販売量や販売期間によって購入額が変わる場合等、その影響を考慮します)

⑵契約における重要な金融要素(利息等も考慮します)

⑶現金以外の対価(有価証券なども対価になり得ます)

⑷顧客に支払われる対価(顧客に支払うリベートなども対価への影響として考慮します)

 

ステップ4:履行義務への取引価格の配分

それぞれの履行義務(あるいは別個の財又はサービス)に対する取引価格の配分は、独立販売価格の比率に基づき、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行います。

 

 

ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
企業は保有資産を顧客に移転することによって、履行義務の充足に合わせて収益を認識します。

顧客が当該資産に対する支配を獲得した時、又は獲得するにつれて資産の移転は認識されます。

 

次に、一定期間にわたって収益認識がされる場合の要件について解説をします。

次の⑴~⑶の要件のいずれかを満たす場合には、履行義務が充足されたと考え、(一定期間にわたっての)収益を認識することができます。

 

⑴契約上の義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること

⑵契約上の義務を履行することにより、資産が生じるか、資産の価値が増加して、その資産が生じるか、当該資産の価値が増加するのにつれて、顧客のその資産への支配が進行すること

⑶a,bのいずれも満たすこと

a 契約上の義務を履行することによって、別の用途に転用することができない資産が生じること
b 契約上の義務の履行を完了した部分について、対価を得ることのできる強制力のある権利を有していること

 

もし上記の要件に該当せず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務となります。

 

この場合は、概念フレームワーク等に定められているように、資産に対する支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時に収益を認識します。