広告業における代理人取引等②

前回に引き続き、広告業における代理人取引について解説していきたいと思います。

前回は、広告・制作業務のプロモーションにおける役務提供業務について、収益認識の認識時点がどうあるべきかについて論考しました。

そして、基準の文言に基づき、履行義務が一定時点において充足されるのか、それとも一定期間にわたり充足されるのかを検討すべきというものでした。

今回は上記を前提としながら、前回の続きから解説をしていきたいと思います。

1.本人と代理人

収益認識基準により新たに加わった論点の一つに、『代理人取引』があります。

本人取引と代理人取引では、収益についての表示が総額であるか純額であるかという違いが生じるため、この区分は非常に重要です。

また、本人に該当する場合と代理人に該当する場合における履行義務が異なりますので、まずは企業側で本人に該当するか代理人に該当するかを判定することが必要となります。

【本人取引とは】

本人取引とは、財又はサービスが顧客に提供される前に当該財又はサービスを支配し、本人の履行義務は、当該財又はサービスを自ら顧客に提供することです。この場合には、財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価を忠実に描写するために、対価の総額を収益として認識することになります。

【代理人取引とは】
代理人取引は、他の当事者が提供する財又はサービスが顧客に提供される前には当該財又はサービスを支配しておらず、代理人としての履行義務を当該財又はサービスが他の当事者が提供するよう自社が手配する取引です。

この場合、企業が代理人として手配することと交換に権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識します。

2.広告業界における代理人取引

企業は顧客に対し財やサービスを提供しますが、新しい収益認識基準では企業以外の当事者が関与している場合において企業自身が単なる代理人なのか、当事者なのかを判断する必要があります。

適用指針39項にこれが定められており、『顧客との約束が当該財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務であると判断され、企業が本人に該当するときには、当該財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識する』とあるように、取引が本人取引の場合は総額表示となります。

一方で、顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを当該他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断される場合、企業は代理人に該当します。

他の当事者により提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額、あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者への支払額を控除した純額を収益として認識することになります。

したがって、広告業においては、財・サービスに当たる広告出稿主に対する広告枠や広告関連サービスを「自ら提供する履行義務」と判断することができるケースにおいては、広告代理店などは「本人」に該当するものとされます。

同様に、広告出稿主に対する財又はサービスが「他の企業によって提供されるように手配する履行義務」と判断することができるケースにおいては、「代理人」に該当するものとされます。

本人と代理人の区分の判定は、顧客に約束した特定の財又はサービスのそれぞれについて行われます。

ここでいう特定の財又はサービスとは、顧客に提供する別個の財又はサービスで、顧客との契約に複数の特定の財又はサービスが含まれている場合には、一部の特定の財又はサービスについて本人に該当するが、他の特定の財又はサービスについては代理人に該当するというようなケースも存在する点には留意が必要です。

3.総額表示と純額表示についての考察

前項までで述べたように、収益の総額表示又は純額表示については、企業が本人に該当する場合と代理人に該当する場合における履行義務、及び会計処理が異なることを考慮すると、企業が本人に該当するか代理人に該当するかを判定することが必須となります。(これは主に次の回で解説します。)

では、なぜ本人取引は総額表示で、代理人取引は純額表示となるのでしょうか。


本人は、財又はサービスが顧客に提供される前に当該財又はサービスを支配し、本人の履行義務は、当該財又はサービスを自ら顧客に提供することとなります。

この場合、財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得るのは取引全体であって、その取引によって見込まれる対価を忠実に描写するためには、対価の総額を収益として認識しなければなりません。


一方で代理人は、他の当事者が提供する財又はサービスが顧客に提供される前に当該財又はサービスを支配しておらず、代理人の履行義務は、当該財又はサービスが他の当事者によって提供されるように企業が手配することに過ぎません。

この場合には、企業が代理人として手配することと交換に権利を得ると見込む報酬又は手数料が企業の生み出した正味の収益ですから、この金額を収益として認識します。