暗号資産交換業者の広告・勧誘規制等①

暗号資産交換業者は、自らが運営する取引所への誘導目的など様々な広告表示を行うのが普通です。

しかし、暗号資産は現状投機的に運用されていることもあり、利用者が下落リスク等を認識しないまま大きな損失を抱えることを警戒する必要もあります。

 

上記のような利用者への取引勧誘の導入部分は特に、適切な表示による情報提供によって利用者によるリスクの誤認や投機的取引の助長を抑止することが必要です。

 

そのため、暗号資産交換業者は、自らの暗号資産交換業に関して広告をするときは、資金決済法により、明瞭かつ正確に表示することが求められるとともに、利用者が誤解を招くような不適切な表示を行うことが禁止されています。

 

今回のコラムでは、暗号資産交換業者の広告・勧誘規制について解説していきたいと思います。

 

1.広告の範囲

暗号資産交換業者に対しては、利用者保護の観点から、不適切な広告の防止など広告の取扱いに関する規定を規定した社内規則等を定めることが求められます。

 

また、こうした社内規定が形骸化しないよう、担当役職員が社内規則等に基づき適切な取扱いを行うように社内研修や法令遵守の社風情勢など、周知徹底をできる内部統制の構築が必要です。

また、現実に法令遵守を実効的に行うには、広告の審査を行う広告審査担当者が配置され、審査基準に基づいた適正な審査の実施も大切なポイントとなります。

 

こうした厳しい規制が課されていますが、では『広告』の範囲としてはどこまでが含まれるのでしょうか?

もちろん個別事例ごとに実態に即して実質的に判断するものですが、一般に広告とは、ある事項を随時又は継続して広く宣伝するため、一般の人に知らせることをいうので次に掲げたような行為を暗号資産交換業者が行う場合には、広告規制の対象となると考えられます。

 

 

①テレビ・ラジオ等のコマーシャル
②新聞紙、雑誌その他の刊行物への掲載
③看板、立て看板、はり紙、はり札等への表示
④広告塔、広告板、建物その他の工作物等への表示
⑤チラシ、カタログ、パンフレット、リーフレット等の配布
⑤インターネット広告
⑥電子メール・LINE等の送信機能などを用いて特定の者に対して特定の行為をするよう勧め誘う行為

 

いずれも広告に該当しますから、上記の方法により利用者に対して暗号資産交換契約の締結の勧誘を行う場合は、法令違反行為とならないよう法務チェックなどを万全にする必要があります。

 

2.表示に関する規制

暗号資産交換業者が暗号資産交換業に関する広告を行う場合、投機的取引の助長の抑止や利用者の誤認防止の観点から、次のような事項を表示する必要があります。

 

⑴暗号資産交換業者の商号

⑵暗号資産交換業者である旨及びその登録番号

⑶暗号資産は日本国通貨又は外国通貨ではないこと

⑷利用者の判断に影響を及ぼす暗号資産の性質

 

また広告においては、明瞭かつ正確な表示が義務付けられており、下記ような事項がその判断のポイントとなります。

①当該広告に表示される他の事項に係る文字と比較して、使用する文字の大きさ、形状及び色彩において、不当に目立ちにくい表示を行っていないか。

 

②取引の長所に係る表示のみを強調し、短所に係る表示が目立ちにくい表示を行っていないか。

③ 広告を画面上に表示して行う場合に、表示すべき事項の全てを判読するために必要な表示時間が確保されているか。

 

3.禁止行為

資金決済法の中で、暗号資産交換業者とその役職員に対して、暗号資産交換契約の締結若しくはその勧誘をするを行う場合や、自らの営む暗号資産交換業に関して広告をする場合の禁止行為が定められています。

 

禁止行為は、暗号資産交換業者又はその役職員による広告・勧誘や取引の受注等によって、利用者の利益が損なわれていないか、又、暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障が生じていないかという視点で定められます。

 

したがって、暗闘資産交換業者及びその役員、従業員は広告、勧誘、契約締結にあたって、次の行為が禁止されます。

 

①暗号資産交換契約の締結等をするに際し、虚偽の表示をし、または誤認をさせるような表示をする行為

 

②暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、または暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為

 

③暗号資産交換契約の締結等をするに際し、またはその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買または他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為

 

④暗号資産交換業の利用者の保護に欠け、または暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとして内閣府令で定める行為

 

こうした行為は、不適切な行為及び暗号資産交換業の利用者の保護に欠け、又は暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがありますので、禁止行為とされていますので、間違ってもこうした行為を行わないよう防止の仕組みを内部統制として組み込み、それを徹底する必要があります。