暗号資産交換業者の分別管理監査について 〜ブロックチェーン編〜

本稿では、暗号資産交換業者の分別管理監査について技術的な観点から少しだけ述べたいと思います。

暗号資産交換業者を取り巻く規制が整備されていく中、暗号資産交換業者は監査法人又は公認会計士による監査が義務付けられました。

概要はこちらを、より詳細についてはこちらを御覧ください。

 

分別管理とは

暗号資産交換業者における利用者の財産と自己の財産の分別管理の状況について、公認会計士又は監査法人による暗号資産交換業者における利用者財産の分別管理に係る合意された手続業務(以下、「分別管理監査」という)を受けることが求められることになりました(資金決済法第63条の11第3項・第63条の11の2第2項)。

そのため、年に一回以上は分別管理監査を受ける必要が生じました。

 

ブロックチェーン技術について

暗号資産は、暗号資産交換業者の利用者が保有する暗号資産を受入れ又は引き出し、暗号資産交換業者間での取引、自社が保有するアドレス間での暗号資産の移動などを行う際にブロックチェーン等のネットワーク上の記録に取引の結果が反映されることになります。

ブロックチェーン等の記録は、暗号資産交換業者の外部で作成される情報であり、暗号資産交換業者の財務諸表監査においては、通常、暗号資産の取引記録又は残高に関する監査証拠としてブロックチェーン等の記録を監査証拠として利用することが考えられます。

当法人は、監査証拠として、監査人自らブロックチェーン等の記録を取得するべきと考えており、各暗号資産のブロックチェーンの全ての記録を読み込ませている「フルノード」を有しています。

なお、監査の実務指針で記載している「ブロックチェーン」はパブリック型のブロックチェーンを前提としています。

<h2ブロックチェーン上の残高(在高)確認

当法人では、暗号資産の残高確認及び異常取引の有無の検証のために各通貨のフルノードを保持しています。

まず残高確認についてですが、例えばBitcoinの場合、UTXO(Unspent Transaction Outputs)モデルのため、各アドレスに紐づく全取引(トランザクション)のフローを集計し期末時点での残高を求めます。Ethereumの場合には、Stateモデルのため期末時点でのBlock Heightに含まれる情報を参照します。LitecoinやBitcoin Cashは基本的にBitcoinと同様の処理を行います。

 

ブロックチェーン上の異常取引の有無の検証

異常取引の有無の検証はもう少し軽く、暗号資産交換業者が管理する全アドレスについて紐づく全取引について閾値(しきいち)を超えるものを洗い出し、必要に応じて交換業者に問い合わせます。

 

まとめ

以上、本稿では技術的な観点から暗号資産交換業者の分別管理監査の実情について述べてきました。実際には交換業者の保有する顧客数は非常に多く、そのため交換業者の管理するアドレス全部についての検証は非常に重たいものとなります。

今回は説明しませんでしたが、これ以外にも必要な検証はあり、暗号資産交換業者と協力して行なっていくものです。

当法人では、暗号資産交換業者の顧客の保護のために様々なサービスを提供していますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。