上場準備会社における監査法人の活用方法

株式上場準備会社に対する監査法人の支援サービス

ショート・レビュー

ショート・レビューとは、株式上場を検討する企業が監査法人または公認会計士に行ってもらう調査のことをいいます。

株式上場の審査基準のひとつに「最近2年間の財務諸表等について、監査法人または公認会計士の監査等を受けていること」が掲げられています。これは監査の結果、上場に必要な内部統制などの問題点を洗い出し、改善していくことが狙いですが、一般的にショート・レビューはその準備のために行われます。

通常は現地の調査やヒアリングを規模に応じて2日~一週間程度で行い、そこから一週間程度で報告書を作成して提出されます。

上場に際しては上場会社監査事務所との契約締結は必須ですが、その契約締結前に内部監査や自社調査を行っても、自社ルールを厳しくジャッジすることができない可能性があります。そのため、第三者から厳しくジャッジしてもらえるショート・レビューによって、早期に株式上場に際しての課題抽出を行い、改善に着手していくことが効果的と言えます。

 

アドバイザリー業務

アドバイザリー業務は、「守りのコンサル」と表現されることもあり、概ね以下の3つに集約されます。

・リスク対応に関する業務(内部統制の構築支援、事業リスクやコンプライアンスリスク対応など)

・会計支援に関する業務(経理業務支援やIFRS対応、M&Aアドバイザリーなど)

・IT支援に関する業務(サイバーセキュリティ、IT統制構築支援、RPA導入など)

ショート・レビューの結果を株式上場準備における課題の確認に活用する

通常は監査契約の締結に先立って監査法人によるショート・レビューを受けるケースが多いです。

このショート・レビューの目的は、会社の担当者に対するヒアリングや会計資料等の閲覧を通じて、会計処理や社内管理体制、関係会社の整備、諸規程等についての問題点を洗い出し、その改善のための方向性を示すことです。

そのため、ショート・レビューを受ければ、株式上場に向けての課題の洗い出しとその解決の方向性がより明確となり、会社はより具体的な改善策の立案・実行に着手できることになります。さらに、その立案・実行は、ショート・レビューを行った監査法人からより具体的な指導・助言を受けることによって、より一層効果的かつ効率的に行うことが可能となります。

株式上場準備作業についての進捗状況の確認に監査の結果を活用する

会社が株式上場をする際には、一定の期間(通常は2年間)にわたり監査法人による監査を受けることが必要とされています。

この監査の目的は、財務諸表の適正性についての意見を表明することであり、この監査の過程で発見された会計処理や社内管理体制等に関する問題点は、通常、詳細な報告書により報告されます。そのため、株式上場を目指している会社は、ショート・レビューや過去の監査を通じて指摘された問題点が、どれだけ改善されたかについて、当該報告によって確認することができます。また、新たな問題点が指摘された場合には、それを早急に改善しなければなりません。

上場申請までに、上場会社としてふさわしい社内管理体制を構築するためには、このように「監査法人による問題点の指摘」→「会社による指摘された問題点の改善」→「監査法人による改善状況の確認と新たな問題点の指摘」の一連の流れを着実に完結させていくことが必要となります。

なお、問題点を適切かつ迅速に改善していくためには、株式上場準備会社、監査法人と主幹事証券会社間の十分なコミュニケーションが必須となりますので、定期的にミーティングの機会を設けることも重要です。

監査法人を選定すべきタイミング

株式上場の際には、監査法人による金融商品取引法監査に準ずる監査を受ける必要があります。そのため、原則として監査が必要とされている期間(通常は2年間)以前に、監査法人と監査契約を締結することが望ましいとされています。

なお、監査契約の締結に先立って株式上場へ向けた課題を確認しておきたい場合には、まずショート・レビューを受け、その結果に基づいて監査契約を締結するか否かを決定することも可能です。

また、監査契約の締結前にショート・レビューを受け、その結果を受けて監査契約締結前に経営管理制度や会計処理の方法を上場審査基準に近づけておきたい場合には、監査法人から上場に向けてのアドバイザリー業務を受けることもできます。

ショート・レビュー、アドバイザリー業務を受ける・受けないのどちらにしても、株式上場に向けた具体的な準備作業を効果的かつ効率的に行うためには、早い時期から監査法人の指導・助言を受けることが重要です。