下請法の禁止行為について③

前回に引き続き、下請法の禁止行為についての具体的な解説をしていきたいと思います。

これまで見たように下請法は違反について非常に複雑な条件分岐があるうえ対象範囲も広範なので、知らず知らずに違反しているリスクが高い法律です。

特に上場準備企業にとっては、下請法違反により公正取引委員会から罰金を科されたり、禁止行為を行ったことに中小企業庁から勧告を受けた場合には良くて延期、最悪は上場中止となるので、決して下請法違反とならないよう万全の社内体制と業務フローを構築する必要があります。

今回のテーマである下請法第4条第1項第2号『下請代金の支払遅延の禁止』は、企業側に知識がないと悪意なく下請法違反になりやすい論点になりますので、ぜひ細部まで理解して業務フローや内部統制を構築していって下さいね。

1.下請代金の支払遅延の禁止(4条1項2号)の趣旨

下請法第4条第1項第2号の規定は、下請代金についての規定です。(第4条1項2号)。

第4条第1項第2号
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(2)下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。

親事業者は、給付の内容について検査をしたかどうかにかかわらず、受領日から起算して60日以内の所定の支払期日までに下請代金を全額支払わない場合は下請法違反となります。

この規定の趣旨としては、立場の強い親事業者の都合で下請事業者の資金繰りが左右されてはならないということになります。

一般的な中小企業の場合、1か月分の資金余剰を有しているのは稀で、下請事業者はその入金をあてにして従業員への賃金の支払、材料代の支払等を行っています。

したがって、下請事業者が期日通りに物品、情報成果物を納品したにもかかわらず、親事業者の都合で下請代金の支払が所定の期日通りに支払われなかった場合、下請事業者側は資金繰りがつかず、最悪の場合は倒産に追い込まれるといった事態になりかねません。

これでは下請事業者側が一方的に損害を被ることになるため、下請法ではこうした事態の防止を意図してこの第4条第1項第2号が定められました。

2.4条1項2号の違反事例について

支払遅延に関する違反行為事例としては下記のようなものがあります。

上場準備局面においてこのような事例が発覚した場合には、直ちに上場準備が中止となるのでよくよく注意しましょう。

製造委託、修理委託における違反行為事例
親事業者A社は、電気機械器具部品及び製品の組立・加工を下請事業者B社に委託しています。

毎月末日納入締切、翌月末日支払とする支払を行う条件で契約締結がなされていましたが、親事業者A社の都合上、検査完了をもって納入があったものとみなすような実務が行われていました。

結果、 下請事業者B社が当月末日までに納入しても検査完了が翌月となった場合には翌月に納入があったものとして取り扱われることとなります。

これは親事業者A社の一方的な都合で一部の給付に対する下請代金の支払が下請事業者B社の給付を受領してから 60 日を超えて支払われることとなり、下請法第4条第1項第2号の違反事例となります。

情報成果物作成委託における違反行為事例
親事業者C社は、ソフトウェアの作成を下請事業者Dに委託していました。

毎月末日検収締切翌々月25日支払の支払を通告していましたが、下請事業者の給付を受領してから60 日を経過しての下請代金の支払となりますので、下請法第4条第1項第2号の違反事例となります。

どちらの事例も支払サイトに関するものですが、下請法の内容を知らないと悪意なく違反行為をしかねないため細心の注意が必要です。

3.下請法第4条第1項第2号と手形の関係

前章で見たように、この下請法第4条第1項第2号の支払遅延に関する規定は非常にシビアな問題で、検収基準にしたことにより契約と1日ズレただけでも下請法違反になりますし、相手方と合意の上でも60日を経過した支払は問答無用で下請法違反となる非常に厳しいものです。

※余談ですが、『60日』であって『2か月』ではないので、翌々月支払とした場合には31日の月が混じると期日通りに末日支払しても下請法違反となります。ですので、特に上場準備企業は支払サイトを翌々月とせず翌月払いとすることを強くおすすめします。ささいな瑕疵に思えるかもしれませんが、中小企業庁や公正取引委員会からこれを指摘された場合、繰り返しになりますが高確率で上場は延期または中止となります。

そこで、どうしても資金繰りの関係上支払サイトを遅らせたい企業が利用するのが手形払いです。手形払いにすれば、支払側にとっては実質的に支払サイトの延長ができますし、手形払い自体は下請法で禁止されている訳ではないので、どうしても支払サイトを長くとりたい企業は実務上手形払いを利用しています。

ただし、手形払いの場合にも無条件にどんな条件でも設定できるわけではないので注意が必要です。

というのも手形払いを行う事が下請法の実質的な潜脱にならないよう下請法では、手形払いについても規定があり、それが下請法第4条第2項第2号の『割引困難な手形の交付の禁止』です。

次回のコラムでは、この支払遅延と下請法第4条第2項第2号の『割引困難な手形の交付の禁止』について解説をしていきたいと思います。

※今回のコラムでは一部法律問題を扱っておりますが、一般論も含め正確な記載をこころがけているものの、執筆当時の状況でもあり、また必ずしも公正取引委員会等の公式見解でもない点についてはご留意ください。

また、下請法全般について網羅的に記載している訳ではありませんので、ここに記載がないからといって適法性が保証される訳でもありません。

実際の実務において当コラムの内容を適用する際には、事前に必ず公正取引委員会や顧問弁護士等に問合せを行い、十分な検討を社内で行っていただくようお願い申し上げます。