下請法の禁止行為について④

前回に引き続き、下請法の禁止行為について解説をしていきたいと思います。

1.下請代金の減額の禁止(4条1項3号)

下請法における禁止行為として、第4条第1項第3号に定められた『下請代金の減額の禁止』があります。

条文としては以下の通りです。

第4条第1第3号

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(3)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

この規定も他の規定と同様、下請取引において下請事業者の立場が弱いことを勘案して、下請事業者の利益が損なわれることを防止するという趣旨で定められたものです。

下請事業者は一般に立場が弱く、決定された下請代金であっても事後に減ずるよう要請されるような事象が現実の商取引においては残念ながら発生し得ます。

親事業者と下請事業者の力関係を考えると、下請事業者の方からこうした要求を拒否することは事実上困難でこうした要求に下請事業者が応じざるを得ないことは下請事業者の事業継続にも多大な影響を与え得るため、下請法においてこれを禁止行為と定めています。

2.第4条第1項第3号における下請事業者の責に帰すべき理由について

一方で、下請代金の減額を無条件に禁止することで、瑕疵ある納品物を納品したにもかかわらずこれを下請事業者側が逆手にとって正規の代金を請求するといったことも起こり得るため、「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、下請代金の額を減ずることが認められる場合についても言及があります。

具体的には、下請事業者の責に帰すべき理由は以下のようになっています。

①下請事業者の責めに帰すべき理由(瑕疵の存在、納期遅れ等)があるとして、受領拒否又は返品することが下請法違反とならない場合に 、受領拒否又は返品をして、その給付に係る下請代金の額を減ずるとき。

②下請事業者の責めに帰すべき理由があるとして、受領拒否又は返品することが下請法違反とならない場合であって、 受領拒否又は返品をせず゙に、親事業者自ら手直しをした場合に、手直しに要した費用など客観的に相当と認められる額を減ずるとき。

③下請事業者の責めに帰すべき理由があるとして、受領拒否又は返品することが下請法違反とならない場合であって、 受領拒否又は返品をせず゙に、瑕疵等の存在又は納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減ずるとき。

いずれも社会通念上、妥当と考えられるケースであり、逆に言えばこのような減額が明らかに妥当なケースを除けば、下請事業者に対して減額通知を一方的に行う等することは法的リスクが非常に大きな行為となりますので十分に注意しましょう。

3.第4条第1項第3号における違反行為事例

では次に、第4条第1項第3号における違反行為事例を見ていきましょう。

製造委託、修理委託における違反行為事例
親事業者A社は、機械部品の製造を下請事業者に委託し、下請事業者B社から納品される部品を使って製作した製品を国内販売及び輸出販売しています。この製品に用いる部品について親事業者A社は、国際的な価格競争下でも利益を出したいという思惑から、「輸出特別処理」と称して国内向けの発注価格から一定額を差し引いた下請代金を支払いましたが、第4条第1項第3号『下請代金の減額の禁止』に抵触するため下請法違反となります。



情報成果物作成委託における違反行為事例

親事業者C社はオンラインゲームの開発を行っている会社です。親事業者C社は開発に当たり、キャラクターデザインやBGMの制作を下請事業者D社に委託していました。しかし、親事業者C社は業績が悪化したため急遽制作予算を減少させ、そのため下請事業者D社に対する支払も当初約定していた下請代金から減額した額を一方的に通知して、減額した代金を支払いましたが、これは第4条第1項第3号『下請代金の減額の禁止』に抵触するため下請法違反となります。

力関係上、親事業者側が非常に強いようなケースではこうした一方的な支払代金の減額を行うようなケースも存在しますが、下請事業者側に相当の過失がない限り簡単には認められないので、特に上場準備企業においては、このような強引な値引き行為は絶対に慎むようにしましょう。

3.返品の禁止(下請法4条1項4号)

下請法第4条第1項第4号『返品の禁止』について解説をしていきたいと思います。

まずはいつも通り条文を見ていきましょう。

第4条第1項第4号

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(4)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

この条文にもあるように親事業者は、取引先からのキャンセルや商品の入替え等、その返品の名目や返品数量の多寡にかかわらず、下請事業者の責めに帰すべき理由のない返品を行った場合には下請法違反となります。

さらに注意すべき点として、仮に親事業者と下請事業者との間で返品することについて合意があったとしても、下請事業者の責めに帰すべき理由なく行われた返品は下請法違反となりますので十分に注意しましょう。


納入した物品または情報成果物を返品された場合、下請事業者は著しく利益が損なわれますので、下請事業者が親事業者に不当に利益を損なわれないようにするというのが本規定の立法趣旨となります。

4.下請法4条第1項第4号における下請事業者の責に帰すべき理由と違反行為

下請法4条第1項第4号においても減額の場合と同様、返品することができるのは下請事業者の責に帰すべき理由がある場合に限られます。


下請事業者の責に帰すべき理由は具体的には以下のように例示されています。

①下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合

②下請事業者の給付に瑕疵等がある場合

3条書面は親事業者と下請事業者が給付の内容について合意したもので、①、②のどちらも下請事業者側の過失により明らかに事前の発注と異なる給付をされたような場合が想定されますので、『下請事業者側の責に帰すべき理由』はかなり限定的なケースである点は強調しておきます。

続いて、違反行為について見ていきましょう。

以下が具体的な事例となります。


製造委託、修理委託における違反行為事例
親事業者A社は、自己のブランドを付した衣料品を下請事業者B社に作らせ納入させていました。親事業者A社はシーズン終了時点で売れ残った分を余剰在庫として抱えたくないため、これを下請事業者B社にに引き取らせましたが、これは下請法4条第1項第4号『返品の禁止』に抵触し、下請法違反となります。

情報成果物作成委託における違反行為事例
親事業者C社は、放送番組の作成を下請事業者D社に委託しています。このたび下請事業者D社から受領した放送番組について、毎週継続的に放送する予定でしたが、視聴率が低下したため放送を打ち切ることとなりました。放送打ち切りとなった下請事業者D社作成の放送番組は親事業者C社にとってはもう不要であることから、納入された放送番組が記録されたVTRテープを下請事業者に引き取らせることとしましたが、これは下請法4条第1項第4号『返品の禁止』に抵触し、下請法違反となります。

納品物に瑕疵があったり、または下請事業者に明らかな瑕疵がある場合を除き上記のような自社都合による返品は下請法違反となります。

昨今ここまで露骨な例は少ないかもしれませんが、特に上場準備企業において下請法違反は致命傷となりますので十分に注意して対処しましょう。

※今回のコラムでは一部法律問題を扱っておりますが、一般論も含め正確な記載をこころがけているものの、執筆当時の状況でもあり、また必ずしも公正取引委員会等の公式見解でもない点についてはご留意ください。

また、下請法全般について網羅的に記載している訳ではありませんので、ここに記載がないからといって適法性が保証される訳でもありません。

実際の実務において当コラムの内容を適用する際には、事前に必ず公正取引委員会や顧問弁護士等に問合せを行い、十分な検討を社内で行っていただくようお願い申し上げます。