上場廃止とは

上場廃止とは、上場している企業が不特定多数の投資家が売買するのにふさわしくないと判断された場合や、自ら廃止を希望したことにより、証券取引所で株式等の金融商品の売買ができなくなることをいいます。

上場廃止というと、倒産などの経営破綻が原因というイメージが強いかもしれませんが、実際にはMBO(M&Aの方法の一つであり、会社買収の方法として多く用いられる手法)や親会社による完全子会社化など、経営戦略的に上場廃止とするケースもあります。

証券取引所は、投資家保護を目的として上場廃止基準を定めています。株式の場合、取引所から上場廃止となることが正式に決まった場合には、その旨を利用者に周知するため、当該株式銘柄は「整理銘柄」として指定され、原則として上場廃止日までの一定期間(約1か月間)売買が認められた後、上場廃止となります。

ただし、上場廃止になっても株主の権利は残ります。株主の権利とは、議決権・利益配当請求権・残余財産分配請求権などです。

また、市場での売買はできませんが、株を購入してくれる相手先を自力で見つけて売却することや、会社に買い取ってもらえるケースもあります。

上場廃止の種類

他社による買収(敵対的TOBなど)

MBOによる上場廃止

買収防衛などの経営戦略上の理由

親会社による完全子会社化

企業合併による消滅会社となった場合

破産や倒産、債務超過など上場廃止基準に抵触

上場廃止基準の概要と分類

上場廃止基準は、その性質ごとに以下の4つに分類することができます。

・ 株式の円滑な流通と公正な株価形成を確保するための基準

株主数や流通株式数、上場時価総額、売買高等が一定の基準を下回った場合や、株主の権利内容及び行使が不当に制限された場合等

 

・ 企業の継続性、財政状態、収益力等の面からの上場適格性を保持するための基準

債務超過や銀行取引の停止、破産・再生手続・更生手続または整理、事業活動の停止等の場合や、完全子会社化等

 

・ 株式の流通に係る事故防止、円滑な流通を形式面から担保するための基準

上場契約違反や株式の譲渡制限、指定振替機関における取扱いに係る同意の撤回等

 

・ 適正な企業内容の開示を確保するための基準

連結財務諸表等の虚偽記載または不適正意見、有価証券報告書または四半期報告書の提出の遅延等

 

代表的な取引所である東京証券取引所(以下「東証」)が定める上場廃止基準の概要は以下のとおりです。

【株主数】

400人未満(猶予期間1年)

【流通株式数】

2,000単位未満(猶予期間1年)

【流通株式時価総額】

5億円未満(猶予期間1年)

【流通株式比率】

5%未満(猶予期間なし)※所定の書面を提出する場合を除く

【時価総額】

10億円未満である場合において、9カ月以内に10億円以上とならないとき、又は上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3カ月以内に当該数値以上とならないとき

【債務超過】

債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき

【虚偽記載又は不適正意見等】

a.有価証券報告書等に「虚偽記載」を行った場合で、その影響が重大であると当取引所が認めた時

b.監査報告書等において「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載され、その影響が重大であると当取引所が認めたとき

【売買高】

最近1年間の月平均売買高が10単位未満又は3カ月間売買不成立

【その他】

銀行取引の停止、破産手続、再生手続き・更生手続、事業活動の停止、不適当な合併等、支配株主との取引の健全性の毀損(第三者割当により支配株主が移動した場合)、有価証券報告書又は四半期報告書の提出遅延、虚偽記載、上場契約違反等、株式事務代行機関への不委託、株式の譲渡制限、完全子会社化、指定振替機関における取扱いの対象外、株主の権利の不当な制限、全部取得、反社会的勢力の関与、その他(公益又は投資者保護)

 

東証(市場第一部及び第二部)では、株式の円滑な流通と公正な株価形成を確保するための基準として、株主数や時価総額、流通株式比率、流通株式数、売買高等を採用しています。

このように上場廃止基準の中には形式的な基準も存在しており、これらの規模が比較的小さい企業の場合は、当該基準に抵触しないように十分に留意しておく必要があります。

最近の上場廃止の動向

上場廃止社数はITバブル崩壊後の2002年以降減少していましたが、2007年以降に再び増加傾向となっており、このことから景気後退の影響が読み取れます。

また、親会社と連結子会社がともに上場する「親子上場」を解消する動きも広がっており、東証では2009年の上場廃止78銘柄のうち約4割が、2010年の上場廃止68銘柄のうち約5割が、完全子会社化によるものでした。

その他、株式の全部取得まで含めると、企業の資本政策や再編に関わる自主的な上場廃止が約8割に及んでいます。

長期化する不景気の影響を受けて、意思決定や経営管理の改善・効率化を図って企業グループの再編を進めていることが一因と思われます。

新興市場における上場廃止基準の見直し

上場当時のビジネスモデルが崩れた会社に対して、市場からの退出を迫るという趣旨で、以下のような新興市場における上場制度・規則の改廃が行われています。

 

  • 東京証券取引所:2009年11月2日に上場規則規程改正の一環として、マザーズの上場会社の株価が、上場後3年を経過するまでの間に新規上場の際の公募の価格の1割未満となった場合において、9か月(事業改善計画等の提出がない場合は、3か月)以内に、当該価格の1割以上に回復しないときは、その上場を廃止とする(有価証券上場規程第603条第1項第5号の2等)。

 

  • 大阪証券取引所:2010年2月に新JASDAQ設立に際しての諸制度の整備の一環として、一定期間(5年間)営業利益が赤字であり、営業キャッシュフローもマイナスである場合等には上場廃止とする。