暗号資産の分類とその特徴について

暗号資産が急速に普及し、特に会計面での処理の指針となるルールや基準設定の必要性が増しています。

 

暗号資産はまったく新しい枠組みによって発行されるデジタルで表現された価値体系ですが、新しいがゆえにどういった会計基準を適用するのか統一的な見解がありません。

まずその基準設定の前提条件として、関連する会計上の論点を議論するために、暗号資産を特性に基づいた定義、分類、区分を行う必要があります。

 

とはいえ現時点では、こうした暗号資産の分類に関して、暗号資産に一般的に適用される定義はありません。

なぜなら暗号資産の取引は現状、非常に広範で多岐にわたり、かつそれぞれが独特な性質を有しているからです。

 

今回のコラムでは、主たる発行目的や本源的価値にしたがって会計処理の基礎なるように暗号資産を分類し、それぞれの特徴について解説していきたいと思います。

 

1.暗号通貨の特徴

暗号通貨は、ビットコインのようなブロックチェーン技術に基づくデジタル・トークンです。

中央銀行から独立した自律分散型のネットワークによって運営され、貨幣のような交換価値として主に機能しています。

 

それ自身がキャッシュフローを生み出すことは無いため本源的価値はないと考えるのが一般的です。

ビットコインのように市場価格があることも市場価格がないこともありますが、いずれにしても、あくまで需要と供給に基づいて価値が生じていると考えられます。

 

会計上の位置づけですが、IFRSや米国会計基準、日本基準等の会計基準設定主体間でも実は調整がなされていないため、明確な基準はまだないと言える状況です。

また、実務的にみると、現時点において暗号資産は、個人による保有が圧倒的に多いうえ、投機目的での保有がほとんどとみられるため、企業の財務報告における重要性は相対的に乏しいと考えられています。

とはいえ、リアルマネー投資家による需要が高まる可能性などが予想されており、早急に会計上の取扱いを改めて検討する必要性があると考えられています。

 

2.トークナイズドアセット

トークナイズドアセットは、株式や債券、不動産、特許、著作権、サービス利用権、金銭債権、コモディティ(金、石油等)など、価値の裏付けがある様々な資産をブロックチェーンを用いてデジタル化した資産担保型のトークンです。

 

ブロックチェーン上には存在せず、代わりに、物理的な資産(例えば、金や石油などの天然資源)の所有権を表すトークンから価値が生じます。

 

トークナイズドアセットを用いるメリットは、既存市場の24時間営業化、国・地域間の市場障壁排除、資産所有権の細分化、スマートコントラクト*の活用による仲介業者の排除といったものになります。

* あらかじめ設定されたルールに従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)、もしくはブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラム

 

原資産に基づき価値が生じるため、これが本源的価値となります。

 

3.ユーティリティ・トークン

ユーティリティ・トークンは、ブロックチェーン技術に基づくデジタル・トークンで、トークンそれ自体は金銭的価値をもたないものの、具体的な他のアセットと交換することによって初めて資産性が生まれる種類のトークンです。

 

価値提供者が利用者に対して財またはサービスへのアクセスを提供し、その権利から価値が生じます。(たとえていえば、アイドルのコンサートチケットのようなものです。)

 

ユーティリティ・トークンの特徴として、下記のようなものがあります。

 

・閉じられた(=一部の人間に限定された)コミュニティや地域などで効果を発揮しやすい

・トークン自体は物質的価値をもたなくてもよい

・交換対象となるアセットの価値を定量化できる

・保有者に、企業のプラットフォームや資産に対する所有権を与えない。

・保有者間で取引される場合もあるが、主として取引の媒体としては使用されない。

 

その本源的価値としては、発行企業のサービスまたは商品に対する需要がそれにあたります。

 

4.セキュリティ・トークン

セキュリティ・トークンは、ブロックチェーン等の電子的技術を使用してデジタル化し発行される法令上の有価証券です。

デジタル証券とも呼ばれています。

 

セキュリティ・トークンは、法人の経済的持分、場合によっては、現金または他の金融資産を受け取る権利(裁量的または強制的に)、また企業の議決権および/または企業の残余持分に対する権利を保有者に与えることができます。

 

セキュリティ・トークンのメリットとして、分散型台帳を基礎とすることで既存の中央集権型の仕組みでは難しかった業務プロセスの改善を図ることができる点が挙げられます。

 

たとえば、従来は証券発行者が証券保有者をリアルタイムに把握できませんでしたが、トークンの利用によって把握が可能となり、証券の発行者と保有者の間に直接的な接点が生まれるようになりました。

また、保有者情報を企業のマーケティングに活かすこともできるようになるかもしれません。

証券の発行や管理にスマートコントラクトを活用して、業務プロセスの簡素化やコスト削減につなげて、これまで難しかった小口の証券発行も可能になるでしょう。

 

このように、セキュリティ・トークンには大きな可能性が存在しまs。

 

なお、セキュリティ・トークンは分散型台帳で電子化された有価証券ですので、その本源的価値は企業価値そのものとなります。

 

したがってトークン保有者は、将来の利益の分配または現金や他の金融資産の受取りにより、企業の成功から果実を得ることになります。