貸金決済法の改正について②

前回のコラムでは、マウントゴックス社の事件などを契機に貸金決済法の2016年改正が行われ、暗号資産の定義がなされたうえで、様々な規制が課されたことを解説しました。

 

今回も、前回に引き続き2016年及び2019年に行われた資金決済法の改正について解説していきたいと思います。

 

1.2016年改正の内容

前回のコラムで解説したように、2016年改正では、第一号仮想通貨、第二号仮想通貨の定義がなされましたが、しこの第一号および第二号仮想通貨(暗号資産)に該当する場合には、提供するサービスが『暗号資産交換業』に該当する可能性があります。

 

そして、暗号資産交換業のに該当する場合は、暗号資産交換業者としての登録が必要になります。

 

留意点としては、単に第一号および第二号仮想通貨(暗号資産)を発行しても必ず『暗号資産交換業』の登録が必要になるわけではないという点です。

 

あくまでも一定の要件にあてはまる場合に限って暗号資産交換業の規制がかかりますので、自社で暗号資産を発行する場合は上記の検討が必要となります。

 

この暗号資産交換業者への登録を義務付ける制度改正は、マウントゴックス事件のような大規模な流出事件を受けて、利用者保護の観点から導入されたものです。

 

したがって、下記のような一連の規制が行われることとなりました。

・ 口座開設時における本人確認等を義務付け
・ 利用者保護の観点から、一定の制度的枠組みを整備(最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理など)

 

2.暗号資産交換業者の要件

「暗号資産交換業」の定義ですが、資金決済法の定義は以下のようになります。

⑴ 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
⑵ 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
⑶ 媒介、取次ぎ又は代理の行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
⑷ 他人のために暗号資産の管理をすること。

 

それぞれの内容を解説していきたいと思います。

 

⑴暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換

暗号資産の売買自体を業とすることは当然ですが、暗号資産取引の媒介行為、取次行為、代理行為などを業とすることも暗号資産交換業にあたります。

なお、媒介、取次、代理は商法上の概念で、その内容は下記のようになります。

 

媒介:媒介は、他人の名義でその利益を他人に帰属させる形で行う法律行為です。不動産と異なり、金融取引では当事者どちらか一方のために行うのが通常です。売買条件を決めるのはあくまで当事者であって、媒介者はその取引成立のために奔走し、手数料を得ることを目的とします。

 

取次:取次は、自ら名義でその利益を他人に帰属させる形で行う法律行為です。金融商品取引業者自身の名前しか取引相手に示さないため、実際の当事者が取引相手にはわかりません。顧客の株券の売買注文を受けた証券会社が、証券取引所など取引所金融商品市場に発注することが取次ぎの典型です。

 

代理:代理も、他人の名義でその利益を他人に帰属させる形で行う法律行為です。媒介者が当事者をつなぐだけで、取引条件を決定する権限がありませんが、代理人は取引条件を決定する権限がある点が媒介と異なります。

 

ここでいう「媒介」行為の例としては、契約締結に向けた勧誘行為や条件交渉などが挙げられますが、該当性の判断が難しいケースもあります。
そのため、最終的には個別の事例ごとに実態に即して実質的に判断されることになります。

 

⑵暗号資産の交換又はその媒介や取次ぎ、代理を業とすること
暗号資産の交換を業とすることや暗号資産の交換の媒介や代理などを業とすることは暗号資産交換業にあたります。

 

売買は対価として金銭を受領すること、交換は金銭以外を受領することです。

 

暗号資産交換業者の場合、暗号資産の引き渡しの対価として、金銭で受け取ることもあれば他の暗号資産で受け取ることもあるため、そのどちらについても同様の定義が行われています。

 

⑶ 媒介、取次ぎ又は代理の行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
暗号資産の売買や交換、それらの取次、代理、媒介などを業として行うにあたって、利用者の金銭管理を行うことは暗号資産交換業にあたります。

 

⑷他人のために暗号資産を管理すること
「他人のために暗号資産を管理する」とは、どういうことでしょうか?

 

これは、暗号資産の売買などを自身では直接行わずに利用者の暗号資産を管理し、利用者の委託に基づいて利用者が指定するアドレスに暗号資産を移転させる行為を意味します。

 

ただし、該当するか否か判断が難しいケースがあるため、最終的には個別の事例ごとに実態に即して実質的に判断する必要があるといわれいます。

 

一例として、事業者が単独で、利用者の利用者の暗号資産を移転することができる秘密鍵を保有している場合で、利用者の関与なく事業者が主体的に暗号資産を移転できるような状態にある場合は、ここでいう「他人のために暗号資産を管理すること」に該当します。

 

したがって、こうした状態で顧客の暗号資産を管理しているならば暗号資産交換業に該当し、暗号資産交換業者としての規制を受けることになります。

 

次回も、引き続き貸金決済法についての解説を行いたいと思います。