法人住民税の解説

前回のコラムでは、外形標準課税について説明をしました。

会計上の勘定科目『法人税等』に分類される税金は、法人税、法人住民税、法人事業税の3種類がありますが、前回解説した法人事業税だけでなく、法人住民税にも利益に連動しない部分があるのはご存知でしょうか。

今回は、法人住民税の勉強をする前提条件として、法人住民税と法人税および法人事業税の違いについて解説していきたいと思います。

1.法人住民税とは

法人住民税は、地域社会の費用について、その構成員である法人にも個人と同様幅広く負担を求める趣旨から課税される税金です。


住民税には、道府県民税と市町村民税の2種類があり、該当の地区において事務所を有する法人に対して、その事務所等が所在する都道府県及び市町村がそれぞれ課税する形をとります。


現行の法人住民税の課税部分は2つに分かれています。

一つ目が、『法人税割』です。

法人税額を課税標準として課税され、使用される法人税額と同じ事業年度で住民税も課税されます。

もう一つは、『均等割』です。

これは従業員数や資本金の金額をもとに算出し、課税する住民税です。

この2つは計算方法は全く異なりますが、法人税割と均等割を合算した金額が法人住民税として課税されることになります。

2.法人税と法人住民税の違い

次に法人税と法人住民税の違いについて解説をしていきたいと思います。

まず一つ目の違いとして、国税が地方税かという点が挙げられます。
税金には国税と地方税の二種類がありますが、法人税と法人住民税ではこの分類上の違いがあります。

国税は、国に納める税金、地方税は、都道府県または市町村の地方公共団体に納める税金という違いがあり、要は、国税と地方税では(納税する法人側から言うと)納付先が異なります。

法人税は国税ですが、法人住民税は都道府県及び市町村に納税を行う地方税です。

したがって(別の税金なので当たり前ですが)申告書も別に作成しますし、納付書も別に発行され、納付先も異なります。

二つ目の違いとしては、課税標準の違いがあります。
課税標準とは、税額を算出する際の基礎となる数値のことで、イメージとしては(利益などの)税率をかける際の大元の数字となります。

すなわち、この課税標準に税率をかけることで、徴収される税額が算定されることになります。

法人住民税の課税標準はやや複雑で三種類あります。

一つは法人税額です。法人税割の金額は法人税額を課税標準として算定されます。

その他、法人住民税においては従業員数と資本金が課税標準となります。均等割の金額は、これらの課税標準を用いて算定されます。

一方で、法人税の課税標準は、「課税所得」です。課税所得は税務上の益金から税務上の損金を控除して計算します。

「益金」は、資本取引を除いた法人の資産を増加させる収益の額のことを、「損金」は、資本取引によを除いた法人の資産の減少の原因となる原価や費用、損失の額のことをいいます。

益金は会計上の収益、損金は会計上の費用と対応しますが、必ずしも両者が一致するわけではありません。

また、所得金額は「益金-損金」で計算されることは上述の通りですが、これも会計上の利益に対応するものの、一致する訳ではありません。

益金、損金は、会計上の税務上の収益及び税務上の費用と考えて良いでしょう

三つ目の違いとして、赤字の場合にも税金が発生するかという点があります。
まず、法人税のような所得を課税標準とする税金は、原則として赤字の場合には税金が発生しません(課税標準がゼロとなるため)。

一方で、資本金などの所得以外の課税標準を設定している場合、赤字会社でも税金が発生します。

上で説明したように、法人住民税の課税標準は一つは法人税額です。

法人税は基本的に所得がマイナス(つまり赤字)の場合は発生しませんので、赤字の場合、法人税は発生せず、法人税割も発生しないことになります。

しかしながら、法人住民税は、法人割以外にも、資本金や従業員の数を課税標準とした均等割もありました。均等割は赤字かどうかに関係なく発生するので、赤字会社でも均等割は発生し、結論として赤字でも法人住民税は発生するということになります。

対して法人税は課税標準が所得だけになりますので、赤字会社の場合は課税標準がゼロになり、法人税自体が発生しません。

3.法人住民税と法人事業税の違い

ここで、法人住民税と法人事業税の違いについて解説したいと思います。

どちらも似たような税金と思われがちですが、まったく質の違う税金になりますので留意が必要です。

まず一つ目の違いとして、損金算入できるかどうかという違いがあります。

法人住民税は損金算入できませんが、法人事業税は損金算入ができる規定となっています。

二つ目の違いは、納税先です。法人住民税は都道府県・市町村のそれぞれに納めますが、法人事業税は都道府県に納めます。

三つ目の違いは、分割基準の違いです。分割基準は、複数事業所が存在する場合に課税標準を分割して税額計算を行う際の、課税標準を分割するための基準です。

法人住民税における分割基準は従業者数のみですが、法人事業税は従業者数のほかに、業種の特徴を考慮して従業員数以外の分割基準が設けられています。