取引所と販売所の違いについて②

会社が投資目的で保有している暗号資産を保有している場合に、値上がりした暗号資産を売却するとします。
この場合に、暗号資産を売却する場所として取引所と販売所のどちらで売却すべきでしょうか。前回に引き続き、暗号資産取引所で売却した場合と暗号資産販売所で売却した場合の違いについて解説していきたいと思います。

1.前回のコラムの要約

前回のコラムでは、取引所と販売所の違いと、それぞれの会計処理の違いについて説明しました。

取引所は、暗号資産を保有する他の利用者とトレードをする場所で、販売所は、暗号資産交換業者が直接利用者に対して販売を行う場所でした。

またその会計処理について、会社が暗号資産を売却した場合は、会計上、取引時点における暗号資産の販売価格と帳簿価額(取得原価)との差額を損益として認識することになります。取引所と販売所で処理が異なることはありません。

また損益計算書への表示方法に関しては、売却収入から売却原価を控除した純額で営業外損益の部に表示することになると思われます。

3.法人税の取扱い

前回は会計処理について見たので、次は税務処理について見ていきましょう。

まずは法人税の取扱いについてです。

売却原価(取得原価)の算出方法は、令和元年度税制改正において、移動平均法または総平均法とされ、法定算出方法は移動平均法とされました。(なお、総平均法を選択する場合には届出が必要となります。)

例外として、暗号資産を購入し、もしくは売却し、または種類の異なる暗号資産に交換しようとする際には、その暗号資産がいずれの暗号資産交換業者においても、本邦通貨及び外国通貨と直接交換ができなく、本邦通貨等と直接交換が可能な他の暗号資産を介在して取引を行うため、一時的に当該他の暗号資産を有することが必要となる場合の取得についての譲渡原価に限り、個別法により算出するとされました。

また暗号資産の売却損益の認識時点は、譲度に係る「契約をした日」の属する事業年度に計上することとされました。この処理の根拠としては、「暗号資産の会計処理等の取扱い」の約定日基準があることから、これと同様の扱いとしたためと思われます。

なお、上記の参考条文としては下記のようになっております。

税務処理については、個別性が高く、こういった解説記事だけでなく、必ず原文に当たることが重要となります。

(法人税法第61条第1項第2号)

その短期売買商品等の譲渡に係る原価の額(その短期売買商品等についてその内国法人が選定した一単位当たりの帳簿価額の算出の方法により算出した金額(算出の方法を選定しなかつた場合又は選定した方法により算出しなかつた場合には、算出の方法のうち政令で定める方法により算出した金額)にその譲渡をした短期売買商品等の数量を乗じて計算した金額をいう。)

(法人税法施行令第118条の6  一部抜粋)

短期売買商品等の譲渡に係る原価の額を計算する場合におけるその一単位当たりの帳簿価額の算出の方法は、次に掲げる方法とする。

一 移動平均法(短期売買商品等をその種類又は銘柄(以下この条において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等を同じくする短期売買商品等の取得をする都度その短期売買商品等の当該取得の直前の帳簿価額と当該取得をした短期売買商品等の取得価額との合計額をこれらの短期売買商品等の総数量で除して平均価を算出し、その算出した平均単価をもつてその一単位当たりの帳簿価額とする方法をいう。)

二 総平均法(短期売買商品等を前号と同様に区別し、その種類等の同じものについて、当該事業年度開始の時において有していたその短期売買商品等の帳簿価額と当該事業年度において取得をしたその短期売買商品等の取得価額の総額との合計額をこれらの短期売買商品等の総数量で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもつてその一単位当たりの帳簿価額とする方法をいう。)

4.消費税の取扱い

次に消費税の処理について見ていきましょう。

暗号資産取引所が保有する暗号資産などの暗号資産を売却する取引は、消費税の課税対象とされておりましたが、税制改正により、2017年7月以降は非課税売上となりました。

なお、暗号資産の売却取引について、会計上は売却収入から売却原価を控除した「純額」で処理しますが、消費税法上は「総額」で処理しなければなりません。つまり、購入時においては支払対価の額が非課税仕入となり、売却時においては売却収入が非課税売上となる点に注意が必要です。

5.仕訳で見る消費税の処理

では、仕訳例を通して消費税の処理を見ていきましょう。

【前提条件】

・X1年4月1日…購入時レート:1BTC =3,000,000円

・X1年10月1日…売却時レート: 1 BTC = 3,600,000円

【購入時】

(借)仮想通貨原価 3,000,000 (貸)現金及び預金 3,000,000

非課税仕入:3,000,000円

【売却時】

(借)現金及び預金 3,600,000 (貸)仮想通貨売上 3,600,000

非課税売上: 3,600,000円

なお、暗号資産の譲渡は非課税売上ですが、課税売上割合を計算する上では、支払手段となり分母に含まれないため、総額で処理することによる影響はないものと思われます。