取引所と販売所の違いについて①

暗号資産を利用者が購入する方法には二つあります。

一つは取引所を通じて購入する方法で、もう一つは販売所で購入する方法です。

今回は、取引所での暗号資産取引と販売所での暗号資産取引の違いについて解説していきたいと思います。

1.取引所と販売所

暗号資産を売買する場所は、一般的には取引所または販売所となります。

取引所では、証券市場での株式の売買と同様に、売り手と買い手の希望価格が一致することにより、取引が成立します。(つまり取引所は、暗号資産を持っている他の利用者と取引する場所ということになります。)

暗号資産の購入希望者は注文を行い、取引所の口座に日本円を入金します。注文した条件が、暗号資産の販売希望者と一致すれば取引が成立します。

取引が成立すると購入希望者のウォレットに取引所から暗号資産が送られるという仕組みです。

したがって、取引所における成立価格は1つのみ、となります。なお、取引所の収入としては、その取引所において行われる参加者同士からの売買仲介手数料です

一方で販売所では、暗号資産交換業者が直接利用者に暗号資産を販売します。

販売所では、暗号資産取引所の運営会社自体が保有する暗号資産を販売し、または暗号資産を買い取ることをしています。販売所が設定する暗号資産の売買価格は、利益が上乗せされており、売却価格と購入価格が異なります。

イメージとしては、取引所の価格を仲値とし、販売所への売却価格はより安く、販売所からの購入価格はより高く設定されています。一例ですが、過去のある時点の大手暗号資産交換業者の両者のビットコイン価格をみると、販売所の売却価格は約1,028千円、購入価格は約978千円で提示され、取引所の価格は約1,004千円で提示されていました。

なお、取引の約定後は、購入希望者のウォレットに取引所から暗号資産が送られ、利用者の暗号資産の残高が増えます。この点については、取引所と販売所で違いはありません。

2. 会計上の取扱い

会社が保有する暗号資産を売却する場所が、取引所と販売所で会計処理が異なることはありません。

暗号資産取引所が運営する販売所または取引所は、暗号資産の円貨換算交換レートを随時提示していますから、売買価格については、特段問題となることはありません。

会計における売買の認識時点として、売買の合意が行われた時に売却損益の認識を行う「約定日基準」と、引渡時に売却損益の認識を行う「受渡日基準」の2つの基準があります。暗号資産の売買取引の認識時点は、「約定日基準」を採用しています(基準52項、53項)。

これについては、以前も述べたように暗号資産の会計処理は、既存の取引では外貨取引にもっとも近いので、これをイメージすると分かりやすいと思います。

また損益計算書における表示区分及び勘定科目名に関しては「暗号資産の会計処理等の取扱い」においても明確に定義されておりませんが、会社が行う暗号資産の売却取引は売買目的有価証券と同様に、営業外損益において「暗号資産換算損益」として計上されることが予想されます。

なお、臨時的または金額による影響が大きいケースにおいては、特別損益となる可能性もあります。

3.具体例で見る仕訳例

具体的な数値に置き換えて仕訳を見てみることにしましょう。

3月決算の会社において、会社がビットコインを購入した場合の具体的な仕訳例は次のとおりです。

・X1年4月1日…購入時レート:1BTC = 3,000,000円

・X2年3月31日…期末時レート:1BTC = 3,300,000円

・X2年4月1日…翌期首戻入処理

・X2年10月1日…売却時レート: 1BTC = 3,600,000円

※評価益については、翌期首戻入処理を採用しています。

【購入時の処理】

(借)仮想通貨勘定 3,000,000  (貸)現金及び預金 3,000,000

1BTC× 3,000,000 = 3,000,000円

【期末時の処理】

(借)仮想通貨勘定 300,000 (貸)仮想通貨評価益 300,00

IBTC ×3,300,000円=3,300,000円

3,300,000円-3,000,000円=300,000円

【翌期首戻入の処理】

(借)仮想通貨評価損 300,000 (貸)仮想通貨勘定 300,000

【翌期売却時の処理】

(借)現金及び預金 3,600,000 (貸)仮想通貨勘定3,000,000

仮想通貨換算益 600,000

1BTC ×3,600,000円= 3,600,000円

3,600,000円-3,000,000円=600,000円

売却原価(取得原価)の計算は、暗号資産の一定時点における取得価額(付随費用を加算した額)から、前回計算時点より当該一定時点までに売却した部分に一定の評価方法を適用して計算した売却原価を控除した価額とされています(基準4項(8))。

具体的な計算方法は掲記されていませんが、原則は移動平均法、継続適用を条件として総平均法を用いるのが一般的と思われます。なお、売却損益の表示に関して、活発な市場が存在しない暗号資産も、同様の処理となりますのでご留意ください(会計基準61項)。