暗号資産交換業者が取引所で売買を仲介した場合の仕訳
暗号資産交換業を営む会社は通常、取引所を運営しています。
取引所では、参加者同士の売買による仲介業務の対価として、参加者それぞれから取引額の一定割合を取引手数料として徴収します。
暗号資産交換業者がこのようにして得た取引手数料の取扱いについて、会計及び税務上どのように処理すべきなのか、今回の記事では解説したいと思います。
1.暗号資産と手数料の関係性
仮想通貨元年と呼ばれた2017年、資金決済法で初めて「仮想通貨」が定義されました。また、この年は1年間でビットコインの価格が約20倍にも膨れ上がりました。
2019年5月31日には、暗号資産への呼称変更などを盛り込んだ資金決済法や金融商品取引法の改正法が国会で可決され、仮想通貨は「暗号資産」に名称が変更されました。
以前から暗号資産は、海外送金など現行の法定通貨を送金する際のコストに比べて、送金金額や送金先に関係なく、格段に安く済むことがメリットの1つだといわれていました。
しかし、たとえばビットコインの場合、送金手数料は BTC 建てで設定されていますので、この年のように価格が20倍にもなってしまいますと、通常の法定通貨の送金手数料と変わらないか、あるいは金額によっては高くなってしまう状況になってきてしまうという問題があります。
これは例えば、送金手数料を仮に0.001BTC とし、 BTC レートを1BTCあたり100万円とすると、単純計算で手数料は1,000円にもなるということです。
海外送金であれば、法定通貨の送金手数料に比べて安い水準ですが、国内送金ですと逆に割高になってしまうので、暗号資産を送金手段として普及させる上で大きなコスト上の問題があるということになります。
2.送金手数料の仕組みについて
そもそも送金手数料は、どのような仕組みになっているでしょうか?
ビットコインの送金手数料は、本来ユーザー側が決めることができます。
そのため、マイナー(採掘者)は送金要請に対して、どの要請を引き受けるか自由に選択します。
マイナー(採掘者)は、経済合理性に則り手数料の高い要請から優先的に承認処理を行っていくことになるのが普通です。
そのため、取引量が増大した時には、システムが送金処理をしきれず送金待ちの件数が多く生じたりします。
現状、国内の大手取引所の大半で、取引所の設定した固定手数料で取引が行われています。
しかし、取引の混雑状況等によっては、手数料を随時上げ下げして需給を調整しているようです。
当然、送金手数料の負担が大きくなっているのであれば、ユーザーは少しでも安い手数料で済ませたいので、競争原理が働いた結果、各取引所の手数料の差は一定のレンジに収れんする傾向にあります。
競争力のある取引所は手数料を徴収しますが、競争力のない取引所の中には自分自身で設定することが可能な取引所や、自己負担がなく実質的に完全無料のところもあるようです。
暗号資産は投資目的で利用されることが多く、送金目的で利用されることは稀であるのが現状です。
このように現状は価格変動が大きく、連動する送金手数料も一定ではありませんが、今後、ビットコインなどの暗号資産が支払手段など投資以外での利用が多くなることで価格が安定し、それに伴って手数料も平準化されていくと予想されます。
3.会計上の取扱いについて
暗号資産交換業者が行う暗号資産の売却取引は、売買取引に伴って得られる差益を損益計算書において純額で表示します(暗号資産会計基準16項)。
ただし暗号資産の売却取引ではなく、仲介業務という役務提供により取引手数料を得る取引の場合、純額表示にはなりません。
取引手数料相当額を収入として、損益計算書の売上高に計上することになります。
【仕訳例】
・仲介時レート:1BTC = 3,000,000円
・仲介手数料:1 BTC ×0.01%=0.0003BTC
仲介時に下記のような仕訳を行います。
(借)仮想通貨勘定 300 (貸) 仲介手数料収入300
0,0001BTC ×3,000,000円=300円
暗号資産建ての取引手数料の円貨換算方法は、原則として「取引所」における取引時のレートによる換算です。
外貨建てでの取引をイメージしていただければ、その応用で理解ができると思います。
4.税法上の取扱いについて
法人税法上は、会計上の取り扱いと変わりがないため割愛します。
消費税法において、消費税の課税対象とは原則として、以下の4つの要件について全てを満たすものとされています。
① 国内における取引であること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行われるものであること
① 資産の譲渡及び貸付ならびに役務の提供であること
暗号資産の取引所が行う仲介業務の対価収入は、上記の4つの要件を全て満たすため、課税売上として処理されます。
事業者が国内で商品の販売やサービスの提供などを行った場合には、原則として消費税が課税されますので、当該事業者の納付税額は、上記の仲介業務の対価を含む課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて計算したものとなります。