暗号資産交換業者が行う業務の内容について①

今回の記事では、資金決済法に基づく暗号資産交換業者が行う業務についてまとめてみました。暗号資産交換業者の業務範囲は、暗号資産取引の仲介・媒介だけでなく、暗号資産の管理業務もその範囲に含まれます。

 

1.暗号資産交換業の定義

資金決済法第63条の2によれば暗号資産交換業者は、「内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。」とされています。すなわち、暗号資産交換業者として登録しなければ業務を行う事ができません。

また、暗号資産交換業者が行う「暗号資産交換業」は、資金決済法第2条第7項により、次のように定義されています。

 

① 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換

② ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

③ 上記①及び②に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること

④ 他人のために暗号資産の管理をすること(その管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)

①及び②を「暗号資産の交換等」、④を「暗号資産の管理」としています。

 

2.暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換とは

 

暗号資産の売買、暗号資産の交換をすることを指します。暗号資産産交換業者自らが、利用者の取引相手となって法定通貨や暗号資産と交換したり、利用者の売買の注文を受けて他の暗号資産交換業者との間で売買したりするような業務がこれに該当します。

暗号資産交換業者が販売所として利用者と法定通貨や暗号資産と交換する場合は、暗号資産の買値や売値を利用者に提示します。

通常は、取引システムにより自動計算されるので、利用者に提示する価格に利用者が合意すると取引は成立します。

その結果、暗号資産交換業者には、売買取引にかかる損益が発生し、決算時には暗号資産を期末の時価で計算するために、期末保有暗号資産に対して含み損益が発生します。

一方取引所で暗号資産を交換する場合は、取引の相手が他の暗号資産交換業者等のこともあり、相手の債務不履行で決済が行われない可能性もあります。

また、暗号資産交換業者が暗号資産の買値及び売値を提示し自らが取引相手となって利用者の法定通貨又は他の暗号資産と交換を行う場合や、取引所における利用者の買注文及び売注文を自ら受ける場合には、これらの取引は暗号資産交換業者のシステム上のみで記録され、ブロックチェーン等に記録されません。

 

3.①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理とは

 

暗号資産の売買や他の暗号資産との交換に係る媒介、取次、代理業務です。

交換に係る行為の媒介とは、法律的には、暗号資産交換業者が利用者から予め金銭又は暗号資産を預かり、暗号資産売買取引のために利用者に取引場所を提供して、売買の注文を集めて利用者同士の売買を成立させる暗号資産売買取引の媒介を行うことです。

暗号資産は受取専用アドレスで受け取り預かりますが、このアドレスは予め指定されています。

暗号資産交換業者は、金銭又は暗号資産を利用者から受け入れ、自社の取引システムの各利用者口座残高に反映させます。

そして利用者は、売買等の注文を各口座残高の範囲内で出すことができ(信用取引等を除きます。)、注文単価と数量が合えば暗号資産交換業者が契約を成立させ約定処理を行います。

その後、利用者の資金口座や暗号資産口座の各残高を振り替え、(媒介手数料が利用者負担の場合は)利用者の口座残高から差し引き、利用者口座に一連の取引の結果を反映させます。

利用者間の約定処理の場合は、通常、当該取引事実を反映させることは行われません。

ブロックチェーン等のネットワーク上の記録には残らず、そのため利用者の口座残高については暗号資産交換業者に管理の責任があります。

そのんため暗号資産交換業者は利用者からの引き出し依頼に応じなければなりません。

預かり資産の流失は当該義務の不履行につながることになりますので、暗号資産交換業者を業とするならばセキュリティ面での十分な対策は必須となります。

 

4.暗号資産の媒介行為に関する定義上の留意点

媒介に当たるか否かについては、最終的には個別事例ごとに実態に即して実質的に判断する必要があります。

例えば、インターネット上で表示等を用いる場合でも、その表示を用いた上で特定の者に対して第三者との契約締結に向けた誘引行為を行っていると評価できる場合には、当該インターネット上の表示等を含めた一連の行為が媒介に当たり得るとされています。

すなわち、インターネット上のサイト等で利用者を集客し、それが結果として実質的な業としての媒介行為を行っていれば、その外形的な建付けがどうであれ媒介行為を行っているとみなされるということになります。

ただし、暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換に関して、下に挙げたような事務処理の一部のみを行うに過ぎない場合は、その実態を重視する観点から暗号資産の取引の媒介に至らないと考えられます。

①たとえば、 商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布・交付(インターネット等を使ったPDF等の電子媒体の配布を含む)。

ただしこの場合でも、単なる配布又は交付を超えて、配布又は交付する書類の記載方法等の説明まで行う場合には暗号資産の取引の媒介に該当し得ることに留意しなければなりません。

②契約申込書及びその添付書類等の受領・回収のみを行う場合。ただし、契約申込書の単なる受領・回収又は契約申込書の誤記・記載漏れ・必要書類の添付漏れの指摘を超えて、契約申込書の記載内容の確認等まで行う場合には、暗号資産の取引の媒介に該当し得ることに留意しなければなりません。

③ セミナー等における一般的な暗号資産の仕組み・活用法等についての説明。

 

いかがでしたか?

次回も引き続き、資金決済法に基づく暗号資産交換業者が行う業務について解説をしていきたいと思います。