暗号資産の用途と種類

暗号資産における会計処理や法制度・税制度を理解するために、前提知識として暗号資産の用途や種類について解説していきます。

暗号資産の用途

暗号資産には1、投資・投機の対象 2、決済手段 3、送金手段と3つの用途があります。

 

1、投資・投機

暗号資産は値動きが激しく暗号資産そのものを売買することによって大きな資産を築いた投資家もおり、投資対象として注目されることも多いです。この点では株やFXと同じようなイメージがあるかもしれません。暗号資産の中でも有名なビットコインは、2016年夏頃は1BTC10万円以下でしたが2017年12月に220万以上まで値上がりしました。その後2019年1月には30万円台まで下がり、2021年4月には700万円を超える日があるほど値上がりしました。これほどのボラリティがあるため、投資・投機として暗号資産に興味を持つ人も多いと考えられます。

注意すべき点は利益を上げた時の税金負担です。株取引で利益を上げた際はどれだけ多くの利益を上げても課税は約20%です。しかし暗号資産の場合は雑所得に分類されるため、給料所得を合算され所得税(5%~45%)として加算されます。

 

2、決済手段

暗号資産は決済手段として使用されており、暗号資産決済専門のECサイトもあります。また、2017年に家電量販店のビックカメラはbitFlyerと提携しビットコインでの支払いが可能になりました。店頭で暗号資産による決済をする場合は、レジの端末にて表示されるQRコードを自己のスマートフォン上のビットコインウォレットで読み取ることによって簡単に決済が完了します。

ビットコイン決済は訪日観光客に対しては販売促進効果があります。最近では日本でもキャッシュレス決済が浸透してきましたが、海外では以前からキャッシュレス決済が広く普及しており外国の人にとっては暗号資産での決済は比較的受け入れやすいものと考えられています。暗号資産は中央管理者を持たないためクレジットカードやデビットカードに比べて世界中のどこでもシンプルかつ素早く決済することが可能です。

しかし暗号資産は法定通貨に比べてボラリティが高いことや、一度取引が承認されると当該取引を取り消すことができないため、不正アクセスで暗号資産が流出した場合や間違えて送付した場合に補償してもらえる仕組みがないことが普及を妨げる要因の一つになっています。

 

3、送金手段

銀行送金では管理者である銀行を経由して送金が行われ、特に複数の仲介者を経由する海外送金時にはそれなりに手数料も時間もかかります。しかし暗号資産の送金をする場合は仲介者を経由せず当事者間で直接行われるため、手数料が銀行送金に比べて格安になります。またインターネット上で暗号化された電子通貨であるため24時間365日送金可能であり、特に海外送金時には利便性が高いと言えます。

現在では個人・法人問わず海外送金・決済をする機会が増えてきています。例えば個人が海外のネットショップから個人輸入をする場合や、海外に留学している子供に送金をする場合など身近なものになってきています。

ただし、最近は暗号資産が全体的に価格上昇してきたため、手数料の安さというメリットが薄れてきています。

暗号資産の種類

暗号資産の中で最も時価総額が大きく有名なものはビットコインですが、他にも多くの暗号資産が存在しており、これらはアルトコイン(Alternative Coin)と呼ばれています。アルトコインの中で時価総額が大きいものにはイーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ等があります。それぞれ価格以外にも違う部分がありますので以下にまとめました。

暗号資産 特徴
イーサリアム スマートコントラクトという仕組みを有しており、取引情報に加え契約情報も記録される
リップル 米国のリップル社が管理者、国際送金変革というコンセプトの下、送金の高速性、処理能力、コストに強みを有している
ビットコインキャッシュ 2017年8月にビットコインから分離、ビットコインよりもブロックのデータ容量を拡大している
モナコイン 日本発の暗号資産、取引データを圧縮し、一つのブロックに書き込めるデータを増やす技術であるセグウイットを世界発採用

 

イーサリアム(ETH)

イーサリアムとは本来、暗号資産そのものを指す言葉ではなく分散型のアプリケーションのことを意味します。イーサリアムはブロックチェーンの中に基本取引情報(いつ、誰が、誰に、いくら支払った)を加え、さまざまなアプリケーションプログラムを記録・実行することができ、スマートコントラクトと呼ばれます。スマートコントラクトの特徴は「契約を完全に自動化することにより、従来の契約で必要となった時間やコストを削減できるほか、不正な取引を防止することができる」ことにあります。

概念としては自動販売機が分かりやすいです。お金を投入⇒商品を選択⇒商品が出てくる、といった取引行動のプロセスが自動で動作するようプログラミングされており、有人店舗に比べるとコスト削減が可能となるだけでなく偽造硬貨による購入などの不正防止にもなり、ブロックチェーン技術におけるスマートコントラクトと同じ特徴を有しています。

このスマートコントラクトを利用することで多くの事業における取引にも応用でき企業間の重要な書面の契約やサービスの売り買いなども行うことができるため拡張性のあるシステムとして期待されています。このプラットフォーム上で使用される共通通貨がイーサ(ETH)と呼ばれるものであり、開発プラットフォームをメインとした通貨という点が特徴です。

 

リップル

リップルはビットコインやイーサリアムなどと違い、開発・運営元となる企業がおり、国際送金を円滑化・低コスト化するという明確な目的を持っている暗号資産です。

開発・運営元はアメリカのリップルラボというベンチャー企業で、リップルが展開している送金ネットワークには300社以上が加盟しています。中央管理者が存在し、ブロックチェーン未使用、また国際送金に特化していて送金ネットワークを展開している点がリップルの特徴です。

 

ビットコインキャッシュ(BCH)

ビットコインキャッシュはビットコインから派生した暗号資産で、基本的にはビットコインと同質の暗号資産ですが、違いは取引処理能力です。

ビットコイン取引のデータ処理容量の上限値は約10分間に1MBまでと定められており、価格上昇と取引量急増により取引完了までに時間がかかる、送金手数料が高くなるなどの問題が生じるようになりました。この問題の解決策として複数の案が対立したことによりビットコインから分離して生まれたのがビットコインキャッシュです。

ビットコインキャッシュはブロックサイズと呼ばれる取引データ処理の容量を最大ビットコインの8倍まで引き上げており、ユーザー側としてはビットコインよりも安い手数料で送金を行うことが可能であるというメリットがあります。また、イーサリアムなどと同様にスマートコントラクトの機能も備えている点も特徴です。

 

モナコイン(MONA)

モナコインは日本の巨大掲示板2ちゃんねる発祥の暗号資産でライトコインをベースに作成されており、ゲーム内の通貨のようなものとして日本人を中心としたコミュニティで利用されてきました。そのため他の暗号資産との大きな違いはメインユーザーが日本人であるという点です。

また、スケーラビリティ解決のために考案されたSegwitが導入された初の暗号資産でもあります。Segwitは取引データから電子署名を削除し、ブロックチェーンの外で管理することでデータ量を圧縮する技術で、この技術によりモナコインの取引時間はベースとなったライトコインより1分程度承認時間が短縮されました。飲食店などで決済手段としての利用もできますが、日本のカルチャーに根ざしたコミックマーケットや動画配信と組み合わせたリアルタイム投げ銭などに用いられている点とSegwitを導入している点が特徴です。

 

 

最後に、三菱UFJフィナンシャル・グループ発祥の暗号資産、coinなど銀行が発行するデジタル通貨の開発がされていますが、1コイン=1円とすることが予定されていることから投資・投機の対象にはなりえません。また、法定通貨との交換価値を完全に固定した場合には資金決済法上の暗号資産には該当しないと思われます。