投資信託のディスクロージャー

ディスクロージャーとは「情報開示」をいいます。投資信託では、投資家が投資の判断を行えるよう、法律で定められた情報開示の制度があります。投資家がファンドの特色、費用や税金、運当会社などを知るための情報が開示されることが必要です。

金融商品取引法に基づく開示制度

銀行や証券会社など金融機関を通じて多くの投資家から募集する公募投資信託の受益証券は、金融商品取引法におけるディスクロージャー制度で同法に定める発行開示と継続開示が求められています。

・発行開示

発行開示は有価証券の募集や売り出しに際して、その内容を広く一般に開示することをいい、投資信託の募集を行う場合には、有価証券届出書を当局に提出するとともに、目論見書を投資者に直接交付する必要があります。また、有価証券届出書の記載内容に重要な事項の変更等があった際には訂正届出書を提出しなければなりません。

目論見書とは、有価証券を発行するために投資家に開示する資料です。あらかじめ、もしくは販売と同時に投資家に交付しなければならない「交付目論見書」と、投資家から請求があった際に直ちに交付しなければならないより詳細な「請求目論見書」があります。「交付目論見書」の記載事項は投資判断に極めて重要な投資情報に限定されています。

なお、有価証券届出書及び請求目論見書においてはファンドの財務諸表が開示されます。

 

・継続開示

有価証券届出書を提出した有価証券の発行者は、投資判断の資料となる情報を提供する目的で、ファンドの財務状況を継続的・定期的に開示し計算期間ごとに有価証券報告書を当局に提出する必要があります。

また、計算期間が6ヶ月以上のファンドの場合には、期首から6ヶ月間の財務状況を開示する目的で半期報告書を提出しなければなりません。更に、投資判断に影響を及ぼす重要な事態が発生した場合には、都度臨時報告書を提出しなければなりません。なお、ファンドにおいては四半期報告書の提出は求められていません。

有価証券報告書においてはファンドの財務諸表が開示され、、半期報告書においてはファンドの中間財務諸表が開示されます。

 

・ファンドの財務諸表

ファンドの財務諸表は、貸借対照表、損益及び剰余金計算書、注記表並びに附属明細表で構成されています。財務諸表の表示方法は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」に遵守する必要があります。ただし、投資信託については別途「投信計算規則」が定められていますので、別記事業として貸借対照表、損益及び剰余金計算書並びに附属明細表の表示方法は「投信計算規則」の定めによるものとされています。

なお、金商法第193条の2第1項に基づき、これらの財務諸表については公認会計士又は監査法人の監査を受けなければなりません。

投信法に基づく開示制度

・発行開示

公募投資信託については上記のとおり目論見書を交付する必要がありますが、私募投資信託(多数の投資家を相手に行うのではない募集、または省令で定める適格機関投資家に対して行う募集)についてはそのような義務はありません。一方、投信法上は受益証券を取得しようとする投資者に対して、信託約款の内容を記載した書面を交付する必要があります。

 

・継続開示

上記の金商法における継続開示とは別に、原則として計算期間ごとに運用報告書を作成し、知れている受益者に交付しなければなりません。

運用報告書には、期末日の資産、負債、計算期間中の運用実績や経過、有価証券等の期末現在における保有状況や計算期間中の売買状況、元本及び基準価額の状況並びに計算期間中の損益の状態などが記載されます。

このうち、計算期間中の損益の状態において記載される各損益項目の金額は、金商法に基づき開示される損益及び剰余金計算書の金額とは一致しません。一致しない要因は、一部解約の計理処理の相違です。つまり、前述のとおり、日々の計理処理では解約金総額を元本部分とプレミアム部分とに区分し、プレミア部分については各損益項目から直接引落す方法がとられています。

運用報告書ではこの点に関して特段修正することないため、各損益項目を引落した後のネットの金額で表示しています。しかし、会計理論的には、一部解約はあくまでも受益者が元本を解約したことにより生じる資本取引であると考えます。そのため、このような処理は資本取引・損益取引区分の原則や総額主義の観点から妥当ではないと考えられています。

そこで、金商法に基づいて開示される損益及び剰余金計算書では、各損益項目からの引落し額を一旦足し戻してグロスの金額で表示し、別途、当期純利益を算出した後に「一部解約に伴う当期純利益金額分配額」という科目を設け、ここで引落し合計額を控除することとしています。

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