株式上場に向けた内部統制構築について

内部統制とは組織活動に関わる全ての従業員(非正規雇用を含む)が守らなければならないルールや仕組みのことです。また、内部監査は内部統制を構成する一部に該当し、内部統制が機能しているかどうかをチェックするものです。

ちなみにコーポレート・ガバナンスとの違いについてですが、コーポレート・ガバナンスは企業内で働く従業員のみならず、株主や債権者などのステークホルダーが関わる概念です。企業が企業価値向上に努め、株主などのステークホルダーに最大限の利益を還元できるような取り組みを行う経営管理統制の仕組みが、コーポレート・ガバナンスです。

内部統制は大企業では厳しく制定されていますし、上場前だけでなく上場3年以内の企業は内部統制報告書の提出が義務付けられていますので、IPOを目指す企業にとって内部統制は必要不可欠です。

内部統制の目的

内部統制には4つの目的があります。

1.業務の有効性及び効率性

組織活動に関わる全ての従業員が取り組む活動において、いかに効率よく多くの利益を得られるかを目的とします。

 

2.財務報告の信頼性

内部統制の目的の中でも最も重要度が高い項目です。財務報告書に虚偽や不正があると株式や投資家、顧客への信頼が落ちてしまうため、財務諸表が適正に作成されるよう情報の信頼性を確保することを目的とします。

 

3.事業活動に関わる法令等の遵守

社会的信頼を高め企業価値を向上させるため、また社会的責任を果たすために法令や企業倫理など守るべきルールを遵守することを目的とします。

 

4.資産の保全

現金だけでなく特許や人材などさまざまな資産を有効活用することを目的とします。また、活用だけでなく取得から処分まで正当な承認手続きを得て行われているかを管理します。

 

更に4つの目的を機能させるために必要とされる構成部分を基本的要素といい全部で6つあります。

・統制環境

・リスクの評価と対応

・統制活動

・情報と伝達

・モニタリング

・ITへの対応

これらが適切に整備されることによって企業は健全で効率的な内部統制を実現することができます。

マザーズの適格要件と内部統制のポイント

会社の株式を証券取引所に上場するためには株主数、流通株式数等の形式要件の他に内部管理体制の有効性等の適格要件を満たすことが必要です。各証券取引所によって適格要件に違いはありますが共通するのは以下のような管理体制の整備です。

 

・適切な開示を可能とする管理体制

・経営の健全性を担保するための管理体制

・合理的な事業計画を立案遂行するための管理体制

・コーポレートガバナンス・内部統制報告制度対応を含む内部管理体制

 

上場企業においては金融商品取引法に定める内部統制報告制度に対応する必要があり、経営者は財務諸表だけではなく内部統制がどの程度有効に機能しているか自ら評価し報告することになります。そしてその評価結果について監査法人等の監査を受けることになります。

そのため、上場準備期間中に内部統制を構築し、評価と監査が可能になるように内部統制の状況を文書化する準備が必要となります。しかし、管理体制の整備は明確な基準がないことや、業界・会社ごとに制約条件があるためどこまで整備すれば必要十分かなどの判断が難しく対応に苦慮する企業が多いです。

内部統制は業務遂行のプロセスにおいてチェックする機能であると同時に、業務の効率性を高める機能も果たします。チェックが多すぎては業務遂行に滞りが生じることもありますので、経営者はバランスを考慮しチェック機能の落としどころを探っていくことが重要です。

内部統制構築のステップ

1.内部統制の理解と方針の決定

金融商品取引法に定める内部統制報告制度の内容を理解し、評価対象範囲を仮決定します。また、自社内にて中心となる内部統制構築推進メンバーを育成します。

 

2.内部統制の現状把握

自社の内部統制の現況を把握して文書化し、未整備事項について制度対応することによってどのような影響が発生するのか等を推進メンバーによって評価をして大体の作業ボリュームを把握します。

 

3.社内共有

社内関係者に向けてより広く内部統制報告制度の内容を理解してもらうために研修会などを開催し、リスクとコントロールについて現場との共有を図りながら文書の更新と未整備事項についての整備計画を作成します。

 

4.不備の是正

現場で内部統制が期待どおりに運用されていることをテストするために評価体制と評価手続きのプランニングをします。また、テストにより不備が発見された場合は不備を是正し、是正状況を確認します。

 

 

上場の申請期から監査法人等による内部統制監査が必要となるため、直前期には未整備事項がすべて整備されたうえで経営者による評価のしくみが運用された状態になっていなければなりません。内部統制報告制度対応に関する一連の準備には時間を要するため計画的に進めていくことが大切です。