株式上場(IPO)とは

会社を上場させるとは、自社の株式を株式市場において売買可能な状態にするということです。上場させることで不特定多数の人が自社の株式を売買できるようになるため、資金調達の多様化を図ることができるだけでなく、知名度を上げることにも繋がります。

また、パブリックカンパニーとしてタイムリーな企業内容の開示や、より高いコンプライアンス等が求められるため上場前に比べてより高い社会的責任を負うことになります。

上場する株式市場にはいくつか種類があり、それぞれの市場ごとに上場条件は異なります。

株式市場の種類

上場をする際には、自社の現状や市場の上場条件などを照らし合わせて最適な市場を選択することが重要です。

日本の株式市場には4つの証券取引所と、各証券取引所にそれぞれ新興市場(成長企業向け)があります。

・東京証券取引所(市場一部・二部) 新興市場(マザーズ・JASDAQ)

・名古屋証券取引所(市場一部・二部) 新興市場(セントレックス)

・札幌証券取引所(既存市場) 新興市場(アンビシャス)

・福岡証券取引所(既存市場) 新興市場(Q-BOARD)

※東京証券所のみ、プロ向け市場としてTOKYO Pro Marketがあります。

市場規模としては東京証券取引所が最も大きく上場企業数も多いです。

ニュースなどでもよく耳にする日経平均とは日経225とも呼ばれ東京証券取引所の市場一部に上場する企業の内、市場を代表する225銘柄を対象とした株価指数のことです。日経225に選出される銘柄は日本経済新聞社が選んでおり、日経平均株価の知的財産は日本経済新聞社が保有しています。日経225の選定基準で考慮される点は、市場での流動性とセクター間バランスの二点です。

日本経済新聞社が流動性の高い銘柄を450社選んだのち、上位75銘柄は必ず日経225に選ばれます。残りの150銘柄はセクター間のバランスを考慮しながらの選定となりますが、セクターとは業界のことで大きく6つのセクター(技術・金融・消費・素材・資本財その他・運輸工業)に分かれており、さらに36業種に分類されます。選定銘柄は基本的に1年に1度必ず見直しが行われます。

また、日本二大証券取引所とは東京証券取引所と名古屋証券取引所のことであり、地方証券取引所は福岡証券取引所と札幌証券取引所のことです。

それぞれの証券取引所では上場企業数も上場条件も違いますが、今回は東京証券取引所における上場審査基準についてまとめました。

※大きい証券取引所の方が上場条件は厳しいものになっています。

東京証券取引所の各市場における主要上場審査基準

一部の審査基準(大企業が所属)※市場第一部への直接上場

  • 株主数(上場時見込み)800人以上
  • 流通株式数(上場時見込み)2万単位以上
  • 時価総額(上場時見込み)250億円以上
  • 純資産額(上場時見込み)50億円以上(かつ、単体純資産の額が負でない)
  • 最近2年間の利益の額の総額が25億円以上であること
  • 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」がないなどの経営上の虚偽がないこと
  • 新規上場申請日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること
  • 最近2年間の財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受けていること

 

 

二部の審査基準(中堅中小企業が所属)

  • 株主数(上場時見込み)400人以上
  • 流通株式数(上場時見込み)2,000単位以上
  • 最近1年間の利益の額が1億円以上
  • 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」がないなどの経営上の虚偽がないこと
  • 新規上場申請日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること

 

 

マザーズの審査基準(新興企業が所属)

  • 株主数(上場時見込み)150人 ※上場時までに500単位以上の公募を行うこと
  • 流通株式数(上場時見込み)1000単位以上
  • 新規上場申請日から起算して、1か年以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること
  • 監査報告書又は 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」がないなどの経営上の虚偽がないこと

 

 

JASDAQの審査基準については二部への新規上場に係る基準と同様です。

 

このように市場によって審査基準に違いがあり東証一部に上場することが最も難しいため、まだ会社規模があまり大きくないベンチャー企業は比較的審査基準が緩いマザーズに上場した後、一部に市場替えを狙うケースが多いです。東証一部にはトヨタ自動車など日本を代表する大企業が所属しており、一部に上場することは会社のステータスアップに繋がります。

株式上場の手順

株式上場をするためには社内管理体制の整備や関係会社の整備などさまざまな準備が必要になります。そのため、上場を検討する際には上場のために実施すべき事項をピックアップし、上場までのスケジュールを作成します。また、上場予定の3年前には監査法人や主幹事証券会社の選定もします。

人手不足という理由により大手監査法人がスタートアップ企業やベンチャー企業の監査を断るケースが増えてきているため、大手監査法人だけでなく中小の監査法人に依頼することも選択肢に入れておく必要があります。

 

~上場準備の標準的なスケジュール~

  • 株式上場予定時期の決定
  • 株式公開のプロジェクトチームの設置(上場に向けて3年前後稼働)
  • 社内体制強化・経営計画の算定
  • 申請書類・審査書類の作成
  • 事前審査
  • 株式の公募・売り出し

 

 

株式上場するにはそのための費用がかかります。例えば監査法人への監査報酬、証券会社への引受手数料、証券取引所への手数料、各種印刷物を発行する費用などで、数千万から数億円となるケースが多いです。株式上場をすると知名度や社会的信用が上がり、資金調達の多様化も図れますがその反面多大なコストや労力がかかります。

そのため、外部の専門家のサポートはかかせません。どのタイミングでどの機関のサポートを受けるべきかを慎重に考える必要があります。