暗号資産でクラウドファンディングに出資した場合の会計処理について

クラウドファンディングは群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、さまざまな目的で資金を必要としている個人または団体がインターネット上で広く支援者を募り、資金を調達する仕組みです。

発展途上国支援や社会貢献活動、芸術家の支援など様々な場面で利用され、日本でも大型の資金調達に使用される例が出てきています。

 

クラウドファンディングには、寄附型、購入型、金融型3種類があると言われています。

寄附型は、出資者が見返りを求めず支援する形で出資されるもの。

購入型は、出資額に応じてプロジェクトから物品購入やサービスを受けられるもの。

そして、金融資型は、株式投資やファンドの仕組みに類似したもので、提案されたプロジェクトに対して出資者(投資家)として参加し、将来の配当等の金銭的なリターンを期待して行われるものです。

営利企業の場合は、購入型によって広告宣伝効果を狙う場合や、余剰資金の運用先として金融型のクラウドファンディングを利用する場合が多いと思われます。

 

なお、クラウドファンディングはネット上での資金調達であることから暗号資産とも相性が良く、資金提供の手段として、送金面での利便性などから暗号資産が利用されるケースがあるため、具体的な会計処理がどうなるか改めて考えていきましょう。

 

1.会計上の取扱い

【送金時の会計処理】

クラウドファンディングでは一般的に、募集金額が目標額に届かなかった場合には、プロジェクトは不成立となり出資者に出資金が返金されます。

 

このような場合、プロジェクトの成否が判明するまで、そのキャッシュアウトの性格が判明しない(成立なら出資、不成立なら何もない)ため、送金時点ではいったん仮払金(使途不明の出費に対して一時的に使用される仮勘定)で処理することになります。

 

【プロジェクトが成立した場合】

募集金額が目標額に達してプロジェクトが成立した時点で実施が確定します。この場合、当社からの出資も確定したことになります。したがって、仮払金から前払費用等の適切な勘定科目に振り替える処理が必要になります。

※なお、不成立の場合は結果として出資をしなかったのと全く同じ結果となるため、仮払金計上の仕訳の逆仕訳を切ります。

 

【プロジェクト実施時】

例えば、会社がある芸能人が主催するプロジェクトへの出資と引き換えに、芸能人の運営するyoutubeチャンネルで会社の宣伝担当者が出演し、かつ1回分の放映枠を会社のサービス紹介に使用できるとします。

プロジェクトが実施されることで会社はyoutubeチャンネルへの出演権を獲得したわけですから、会社としては不特定多数の消費者への広告宣伝効果が期待できる機会を得たといえます。したがって、当該プロジェクトが実施された時点で、前払費用を広告宣伝費に振り替えることになります。

では、具体的な仕訳を見ていきましょう。

 

〔仕訳例〕A社は、購入型のクラウドファンディングに200ETH(イーサリアム)を出金した。

 

①出金時

(借)仮払金2,000,000  (貸)仮想通貨勘定2,000,000

※A社は、B暗号資産取引所において1ETH= 10,000円で200ETHを購入し、直ちに送金した。

 

②プロジェクト成立時

(借)前払費用2,000,000  (貸)仮払金2,000,000

 

※プロジェクト不成立時

(借)仮想通貨勘定2,000,000  (貸)仮払金2,000,000

 

③上映会実施時

(借)広告宣伝費5,000,000 (貸)前払費用5,000,000

 

 

2.法人税の取扱い

法人税においても基本的に、会計上の取扱いと同一ですが、税務上特別な取扱いをする交際費、寄附金との区分について注意する必要があります。

 

交際費は、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」と定義されますが、たとえば、プロジェクトに取引先等が関係しており、その関係を良くする目的で参加する場合、クラウドファンディングへの出資自体が、一種の接待等に該当するとみなされ、税務上の交際費となる場合があります。(たとえば、クラウドファンディング自体の出資への見返りを目的としたものでなく、明らかに取引先との関係強化を目的として出資などがこれに該当します。)

 

また、購入内容に価値や効果がなく、実質的に見返りのない協賛であれば税務上の寄附金になります。

税務上の寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合の金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は経済的な利益のその供与の時の価額であり、対価性の乏しいクラウドファンディングへの出資は、実質的な寄附行為とみなされるからです。

なお、寄附金の取り扱いは「暗号資産で寄附を行った場合の処理」の記事を参照してください。

 

最後に、プロジェクトが2事業年度に渡って実施される場合についての処理についてです。

この場合、どちらの事業年度で費用計上するか問題になりますが、広告宣伝費等の費用については、最初にその効果が発現した日の属する事業年度において費用計上することになります。(これは、クラウドファンディングではない通常の広告宣伝等の費用の場合と一緒です。)

 

3.消費税の取扱い

費用計上の際の消費税の取り扱いは、プロジェクト実施時の2.法人税の取扱いにあわせて決定します。

法人税法上、広告宣伝費、交際費に該当する場合は、課税対象取引になりますが、寄附金に該当する場合は、課税対象外取引になります。

※消費税法上、クラウドファンディング特有の論点はなく、原則的な処理方法となります。