ベンチャーキャピタルの種類とフェーズについて
ベンチャーキャピタルの種類
ベンチャーキャピタルは出資母体となっている企業などによって主に4種類に分類されます。
・独立系ベンチャーキャピタル
・政府系・大学系ベンチャーキャピタル
・金融機関関係ベンチャーキャピタル
・事業会社系ベンチャーキャピタル
独立系ベンチャーキャピタルは系列の親会社を持たず、独自に集めた資本で運用しているベンチャーキャピタルのことです。事業会社などの系列もないため事業提携などは行わず、キャピタルゲインのみを目的とする事業スタイルです。
出資母体がないため自社独自の判断で投資先企業を決定することができ、起業直後の企業に重点的に出資をするところや、特定の業界に絞って出資するところ、企業がある程度成長してから大型投資するところなど会社独自の出資方針をもっているという特徴があります。代表的な独立系ベンチャーキャピタルには、日本アジア投資、日本ベンチャーキャピタルなどがあります。
政府系・大学系ベンチャーキャピタルは、出資母体が政府系機関であり、公的な資金を使って投資をするベンチャーキャピタルです。公益性の高い事業に対して投資を行うため、主に上場企業の再編や中小企業の育成・支援などが投資対象です。また、スタートアップ企業やベンチャー企業のためのベンチャーキャピタルへの投資も行っています。政府系は国内企業の支援を目的としているため、出資を受けることで経営方針などに強く意見されるというケースはあまりありません。代表的な政府系ベンチャーキャピタルには、INCJがあります。INCJは既存の官民ファンドである株式会社産業革新機構から新設分割して発足したベンチャーキャピタルです。
大学系ベンチャーキャピタルは大学のスタートアップを支援するベンチャーキャピタルで、学内での研究をビジネス化する際の資金調達先として活用するのが一般的です。大学や研究所で生み出された研究結果や技術などを事業化することが目的で、新たな技術が生み出す大きなイノベーションは大きなリターンを生み出す可能性があります。
政府系・大学系ベンチャーキャピタルは、有名ITスタートアップへの投資というよりは技術力や産業維持などを重視投資するという点で、他のベンチャーキャピタルとは異なっています。
金融機関系ベンチャーキャピタルは、地銀やメガバンク、保険会社やその他金融機関などが出資母体のベンチャーキャピタルです。金融機関が出資母体のため出資金額が大きくなる傾向があり、また金融機関としての強みを活かした事業提携や経営支援が期待できます。比較的規模が大きくなった企業へ出資する傾向があり、将来的にその系列金融機関と取引をしていくことになるので、その点に注意する必要があります。
代表的な金融機関系ベンチャーキャピタルには、みずほキャピタルや三菱UFJキャピタル、SBIインベストメントなどがあります。
事業会社系ベンチャーキャピタルは投資を本業としない事業会社が出資母体であり、コーポレート・ベンチャーキャピタルと呼ばれることもあります。事業会社が持つ技術や販路開拓などのサポートを受けられる点が特徴です。
投資リターンを目的とする以外に、自社事業へのシナジー効果や情報収集を目的で出資するケースも多く、案件ごとに目的は異なります。企業買収を目的としている場合もあるため、出資を受ける際には出資者の目的を確認しておくことが重要です。
コーポレートベンチャーキャピタルを傘下にもつ事業会社は数多く、NTTドコモ傘下のNTTドコモ・ベンチャーズなどがあります。
フェーズごとのベンチャーキャピタルの関わり方
ベンチャーキャピタルは投資先企業の成長フェーズに沿って支援の内容や期待リターンが異なります。
起業からエグジットを検討するまでのフェーズをシード⇒アーリー⇒ミドル⇒レイヤーと呼び、シードなど成長の初期段階ほど事業の失敗リスクは高くなるため、投資家が期待するIRR(投資期間内における1年あたりの利回り)が高くなります。
・シード期(調達額は数百万円)
ビジネスモデルだけは決まっていて、会社設立前や設立間もない時点を指します。ベンチャーキャピタルは成功確度の低い企業のシード期に投資するか否かの判断をします。この時期は法人設立の際の費用や人件費など最低限の資金調達が必須ですが、ビジネスがスタートしているわけではないためそれほど多くの資金を必要とするフェーズではありません。
ベンチャーキャピタルは資金調達や中長期事業計画の策定などで経営に関わります。具体的な事業計画が出来上がっていない場合などもあり、起業家のアイデアや人柄を見て投資判断することもあります。
・アーリー期(調達額は数百万円)
シード期で計画されたビジネスを実際にスタートした状態の時期を「アーリー」もしくは「スタートアップ」と呼びます。シード期に比べると研究開発や設備投資などでビジネスにかかる費用が増える一方、まだビジネスが軌道に乗っていない時期のため赤字になりやすい傾向があります。経営者にとって企業のアーリー期は、生き残りをかけた非常に重要な期間であり、ベンチャー企業が資金不足で倒産するケースが多いのも特徴で、経営者の手腕が問われます。
ベンチャーキャピタルからの投資は、この時期の主要な資金調達手段のひとつです。ベンチャーキャピタルは出資のほか、投資先企業に対して経済的・精神的にさまざまな支援を行います。
・ミドル期(調達額は数千万円~数億円)
商品やサービス、企業自体が広く認知され始める時期を指します。経営状況が赤字もしくは低収益でも、倒産リスクはアーリー期に比べてかなり低くなっています。会社組織としての体裁が整ってくる時期でもあるため、慎重な資金繰りを行いながら会社を成長させるための人材確保や設備投資のための資金調達を必要とする時期です。ベンチャーキャピタルは引き続き出資を行いますが、投資先企業が金融機関等からの借入を利用するケースも増えてきます。
・レイター期(調達額は数億~数十億円)
レイター期は事業が黒字化し、キャッシュが生み出せるようになった時期を指します。既に会社は成長しているため、このフェーズでは明確にIPOを目指すことが増え事業の拡大や新規事業の展開をしていきます。ベンチャーキャピタルは投資回収のために、株式公開の際の幹事証券会社や監査法人の選定に対するアドバイスを行います。
このようにフェーズによってベンチャーキャピタルの関わり方が異なりますので、経営者は会社が今、必要としているものは何かを見極め、経営方針に合致したベンチャーキャピタルを選ぶことが重要です。