売上の対価として暗号資産を受領した場合の税務上の処理について(円建て)

今回のテーマは、企業が財やサービスを提供した場合の売上対価として暗号資産を受け取った場合の会計上・税務上の処理についてです。会計上、法人税、及び消費税の申告上、どのような点に留意すればよいか、そして、円建て表記の場合と暗号資産建て表記(掛け取引)の場合でどのように処理が異なるかについて解説していきます。

まずは、円建て処理の場合について述べていきたいと思います。決済が円建てになる場合は、売上と同時に暗号資産を受領する掛け取引ではない取引となります。
したがって、多くの場合、消費者を相手とする取引となると思います。
以上の理由から、ここでは消費者取引を前提として解説をしていきたいと思います。

1.会計上の処理について

消費者からの売上代金を暗号資産で受け取る場合には、消費者が購入し決済した時の取引所レートで送金されますので、受け取った時点での取引所の交換レートで暗号資産建の金額を認識します
会社は期末時に保有する暗号資産について、実務対応報告38号5項に従って時価評価することになります。

たとえば、売上代金の1,000,000円を自社指定のビットコインアドレスに送金してもらった場合、送金時のビットコインの交換レートにより消費者からビットコインを受け取ることになりますが、当該ビットコインを期末時も引き続き保有していれば、通常使用する自己の取引実績の最も大きい暗号資産取引所または暗号資産販売所における取引価格により時価評価することになります

また、開示面では、期末時の時価評価差額は営業外収益また営業外費用の部において「暗号資産評価損益」として計上することになります。

具体的な仕訳は以下の通りです。

(条件)

売上時レート:1BTC = 1,500,000円
期末時レート1BTC= 1,700,000円

(売上時)

暗号資産1,000,000円 売上高1,000,000円

(期末時)

暗号資産200,000円 暗号資産評価益200,000円

なお、現在暗号資産を支払手段として取り扱っている小売店等は、暗号資産の変動リスクを避けるため、瞬時に円換算する仕組みを利用しています。
したがって実務上は、暗号資産換算差益(差損)は僅少にしか発生しないことがほとんどです。

また、暗号資産建て売上取引の会計処理については、下記の記事なども参照してください。

2.法人税法上の取り扱い

企業が財やサービスを提供した場合の売上高は、通常の商取引と同様に、収入(益金)として認識します。

また、円建ての請求金額について、ビットコインでの支払を受け、そのまま期末で保有している場合に会計処理上時価評価したときは、法人税法上でも時価評価損益を計上することになりますので、法人税の申告書で別表調整をする必要はありません。

ただし、時価評価すべき暗号資産を期末に保有しているにもかかわらず時価評価しない場合には、別途調整が必要です(経過措置の適用を除きます)

3.消費税の取り扱い

法人税の取り扱いと同様、財やサービスの内容により消費税の課税関係は異なります。国内での商品販売なので、暗号資産で受領した場合でも、通常の売買と同様に課税区分を判断して適用することになります。

一方で、暗号資産を期末時に保有し時価評価した場合はどうなるでしょうか?この場合、含み益また含み損が発生しているだけですので、資産の譲渡等には該当しません。したがって、消費税の課税関係は生じません。