マイニングにより暗号資産を獲得した場合の税務上の処理について

マイナー企業がマイニングによって暗号資産を獲得した場合の税務上の処理について解説します。

1.マイニングとその会計上の取り扱い(復習)

※会計上の取り扱いについては、以前マイニングと会計上処理についてで取り扱っているのでそちらも参照ください。

暗号資産は、通貨を管理する国や中央銀行が存在しないため、第三者がコンピュータのネットワークを利用して暗号資産を管理する仕組みになっています。

この第三者による取引の承認および確認作業をマイニング(採掘)といいます。マイニングを行うには、コンピュータで取引をチェックし、ブロックチェーンと呼ばれる取引台帳に追記していく必要があり、膨大な計算作業を要します。

たとえば暗号資産の代表格であるビットコインの場合、マイニングマシンと呼ばれるコンピュータを使ってマイニングを行い、マイニング行ったマイナー(採掘者)にビットコインが報酬として付与され、その結果としてビットコインの総量が増加する仕組みになっています。

現在、中国企業中心に多くのマイナーが多額の設備投資と電気代などのコストをかけてマイニングの処理速度を競いあっています。この報酬は、約4年ごとに報酬が半分になる「半減期」があり、 ビットコインの発行総量約2,100万 BTCに達するまでマイニングによる採掘が続けられる予定です。

次に会計処理についての考え方について復習します。

マイニングは多額の設備投資と人件費や水道光熱費その他のコストをかけて暗号資産を獲得する行為であることから、製造業における製造のようなイメージもあります。

しかし、暗号資産の仕組みを成立させるため、当初からシステム上で組み込まれたプログラムであることを考えると、暗号資産の生成作業報酬としてマイニングによって獲得できた暗号資産は、マイナー企業の売上に計上すべき性格のものと考えられます。

したがって、マイニングによってビットコインが付与された時点の時価による円貨で売上高を計上し、同額を貸借対照表の暗号資産勘定に計上することになります。

この場合の時価は、マイナー企業における取引実績の最も大きい暗号資産取引または暗号資産販売上における獲得時点の取引価格によることになります。

(仕訳例)

弊社がマイニングに成功し、6.25BTC(6,250,000円)を獲得した。

(借)暗号資産 6,250,000 (貸)売上 6,250,000

費用面については、マイニングにかかった人件費、電気代設備の減価償却費等のコストを売上に対して期間対応させ、原価または販管費として計上することになります。

2.法人税の取り扱い

仮想通貨に関する所得の計算方法について(情報)」(国税庁 2017年12月1日)によれば、暗号資産の税務上の取り扱いとしては、マイニングによって暗号資産を獲得した時点において、獲得した暗号資産の獲得時点の時価から必要経費を除いた金額が課税対象となるとされています。

法人税法では特段の情報公開がなされていませんが、この取り扱いは所得税に限定されたものではないと考えられるため、マイニングについて、広く税法上の取り扱いとして適用されるものと解することができます。

したがって、会計上の考え方と同様に法人税においても、獲得時点で売上高を認識することになると考えられます。

ところで、現在ビットコインのマイニングは、10分間に1度の間隔という非常に速い速度で行われています。

そのため注意点として、通常の会計記録のために必要な体制に加え、マイニングによる暗号資産獲得を適切に会計処理・税務処理に反映するためには、決算日のマイニングによるビットコインの獲得についての帰属期間を明確にできるよう、獲得時間を正確に確認できるコンピューター上のログ等の客観的資料備えることが必要になります。

3.消費税の取り扱い

2017年4月に施行された資金決済に関する法律(資金決済法)により、ビットコイン等の暗号資産は、通貨等と同じ「支払手段」として法律上定義されることになりました。

消費税法においては、従来から通貨等の支払い手段の譲渡は非課税取引とされていました。

ビットコインを始めとする暗号資産は資金決済法によって支払手段として定義されたため、暗号資産の売買についても、2017年4月1日以降、消費税が課税されない課税取引に該当することになりました。

今のところ暗号資産のほとんどが、支払手段というより投資目的での保有に偏っており、この場合の売買についても非課税取引に該当するのかという点は議論がなされているところです。

しかし、いずれにしても現行法においては、消費税の取り扱いについては保有目的にかかわらず、ビットコインの売買は一律非課税取引に該当することになります。

さて、マイニングによる暗号資産の獲得についてすが、消費税の取り扱いとしては不課税として取り扱われます。

なぜなら、消費税の課税要件は、①国内取引であること、②事業者が事業として行うものであること、③対価を得て行うものであること、④資産の譲渡、資産の貸付また役務の提供であることの4つですが、そのうち③の要件を満たさないと解されるためです。

対価を得て行う取引は、資産の譲渡等に対する反対給付である対価を誰が得るかについて確定していることが通常ですが、マイニングの場合、ブロック(個々の取引データである「トランザクション」を一つにまとめたもの)が生成されるまで獲得者が不特定であるため、この要件に合致しないからです。次に、マイニングを実施するために応じた設備購入や光熱費等の費用についてです。

これらの費用は、個別対応方式による仕入税額控除の計算を行う場合、不課税取引に要するものとして共通対応課税仕入に区分するのではなく、非課税売上対応課税仕入に区分することとされています。

これは、マイニング事業の本来的な目的がマイニングによる暗号資産の獲得ではなく、獲得した暗号資産の譲渡による資金回収であり、暗号資産の譲渡が消費税の非課税取引に該当するため、それに対応するものとして非課税売上対応課税仕入に区分するものと解されています。

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