暗号資産で海外の賃貸用不動産を購入した場合

昨今の円安の影響などで、海外への投資が注目を集めているようです。

特に不動産投資は、安定したインカムゲインがあることからも非常に人気で、急速な少子高齢化に悩む我が国よりも人口増加と経済成長が同時に見込める東南アジアなどを重視する投資家も多いと聞きます。

例えば、かなり以前からビットコインなどの主要な暗号資産などに投資し現在も保有し続けている場合、値下がりしたといっても保有する暗号資産はかなりの含み益が出ていることが予想されます。

こうした個人が思い切ってビットコインでベトナムの賃貸用不動産を購入して不動産投資を行うことにした場合、税務上はどのように扱われるのでしょうか?

今回は、不動産購入に関わる暗号資産の税制について解説していきたいと思います。

1.所得税の取扱い

暗号資産をはじめ、暗号資産は法律上、支払手段として取り扱われます。

冒頭の事例のように、含み益のあるビットコインなどの暗号資産を不動産の購入代金に充てるケースというのは、暗号資産を支払手段として使用したことになります。

所得税法においては、この支払手段として使用した時点で暗号資産の譲渡があったものとみなされます。

なぜなら所得税法における資産の譲渡とは、「有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為」とされており、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれるためです。

そのため、代金の支払いを行った時点で暗号資産を譲渡したことになることから、暗号資産の購入時よりも支払い時のレートが高い(含み益がある)場合には、譲渡による利益(譲渡益)があると認識され課税所得が生じることになります。

逆に暗号資産の購入時よりも支払い時のレートが低い(含み損がある)場合には、譲渡による損失(譲度損)が生じたことになります。

暗号資産の譲渡による利益または損失については、事業所得等となる場合を除き、原則として雑所得に該当することになります。

なお、ご質問の場合には米国の不動産を購入することから、日本円と米ドル、そして暗号資産と2種の法定通貨と1種の暗号資産が登場します。この場合、どの交換レートを用いるかが重要になります。

暗号資産を外貨建の取引に使用した場合には、まず当該外貨と暗号資産の交換レートにて換算することとなります(暗号資産をいくら使用したか)。その後、使用した暗号資産を円との交換レートで計算し、最終的に円貨換算にて取引金額を算出します。

※所得はその内容によって10種類に分類され、雑所得は「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。」

例えば、会社から支払われる給与は「給与所得」に、事業から得られる収入は「事業所得」に、預貯金の利子は「利子所得」に分類されます。その中でも、「どの所得にも当てはまらない所得」は雑所得に分類されます。

2.具体的な計算例について

それでは、具体的な事例で見てみましょう。

(前提条件)

不動産購入金額 900,000ドル

米ドルと暗号資産の交換レート 1BTC =9,000ドル

日本円と暗号資産の交換レート 1 BTC = 1,000,000円

(不動産購入時)

①まずは、米ドルと暗号資産の交換レートで使用金額をビットコイン建てに換算します。

900,000ドル÷9,000 ドル=100BTC

②次に、日本円と暗号資産の交換レートで使用金額を日本円に換算します。

100BTC ×1,000,000円=100,000,000円

上記の計算により、米国の賃貸用不動産を購入するため100BTCを譲渡したことになります。

1BTC=700,000円で暗号資産を取得していた場合には、30,000,000円の譲渡益(100,000,000-100BTC ×700,000円)が発生することとなります。

また、不動産購入時の円貨換算金額である100,000,000円が、賃貸用不動産の取得価額となります。

なお、今回の事例においては、購入にかかる諸費用等は計算を簡便にするため、考慮しておりません。

(まとめ)

米国の賃貸用不動産の購入代金を暗号資産で支払いをした場合には、支払いをした日の円換算レートで計算された金額により暗号資産を譲渡したことになります。そのため、暗号資産の取得時よりもレートが高い(含み益がある)場合には課税所得が認識され、原則として確定申告が必要になります。

3.消費税の取扱い

消収税法において、消費税の課税対象とは原則として、以下の4つの要件について全てを満たすものとされています。

  • 国内における取引であること
  • 事業者が事業として行うものであること
  • 対価を得て行われるものであること
  • 資産の譲渡及び貸付ならびに役務の提供であること

個人が海外の不動産を購入をするケースはそもそも国内における取引に該当せず、消費税の課税対象とはなりません。