投資信託の主な業務の流れ

投資信託には以下の4者が関係しています。

受益者 販売会社 委託者 受託者
投資家 証券会社・銀行 投資信託委託会社 信託銀行

 

今回は主に投資信託委託会社の業務について解説していきます。また、投資信託の仕組みについてはこちらを参照ください。

委託会社における業務運営体制

投資信託における委託会社では、他の金融機関のように業務が、

フロント・オフィス  /  ミドル・オフィス  /  バック・オフィスに分掌されていることが多いです。

フロント・オフィスは、株式や債券等の売買を行うセクションであり、通常、ファンド・マネージャーが在籍しアセット・アロケーション(投資資金を複数の異なった資産に配分して運用すること)や銘柄選択を行う運用部門と、売買の発注を行うトレーディング部門に分けられています。

ミドル・オフィスとは、フロント・オフィスから独立した立場でその業務を監視するセクションであり、各ファンドのパフォーマンス評価やリスク管理などを行います。

バック・オフィスとは、フロント・オフィスで執行された取引の約定処理や基準価額の算出などの事務処理を行うセクションです。委託会社の規模によってはバック・オフィスがミドル・オフィスを兼ねているケースもあります。また、ファンドの運用が前述のような法令や信託約款等のルールを遵守しているかどうかなどを監視するコンプライアンス部門もあります。

一日の主な処理の流れ

1.追加・解約処理

2.資金繰り算出・照合/コール約定処理・照合/配当金、利金処理

3.マザー約定処理・照合

4.国内約定処理、時価取込

5.国内資産確定処理

6.基準価額算出、照合

7.基準価額発表

約定・受渡し

株式や債券等の売買においては、通常、ファンド・マネージャーが運用計画書に基づいて銘柄を選択し、トレーダーに発注依頼をします。発注を受けたトレーダーは証券会社等のブローカーに売買の発注を行います。発注の約定が成立するとトレーダーは約定伝票に約定結果を記入し、バック・オフィスに回付します。

一方、ブローカーからは当日の約定結果について約定連絡票(コンファメーション)が送付されてきます。バック・オフィスはこのコンファメーションと約定伝票とを照合し、一致を確認後、ファンド計理システムに入力します。また、運用指図書を作成し、受託銀行に送付します。

受渡しは受託銀行が委託会社からの指図に基づいて行います。バック・オフィスは受託銀行からの受渡し完了の通知に基づいてファンド計理システムに入力します。

近年ではSTP(Straight-Through Processing:人手を介さずITを利用して一連のプロセスを自動処理させる仕組み)化の流れのなかで、約定から受渡しまでのプロセスがシステム上で自動的に処理される場合が多いです。

追加設定・一部解約

受益者が販売会社に追加設定もしくは一部解約を申し込むと、販売会社は申込日当日に当該申込をファンドごとに集計し、委託会社へ連絡します。これを概算連絡といい、主にファンド・マネージャーに対して資金繰りのための情報を提供することが目的です。

これにより投資信託の当日中に出金する予定のない金額(余資)が確定するので、この余資をコール市場(金融機関同士が短期の資金を貸し借りする市場)にて貸出運用します(コール約定)。これらの金額については信託銀行と照合を行います。

追加・解約はそのときの基準価額(投資信託の値段のことで、多くは1口または1万口当たりの値段のことです。その投資信託が保有する株式や債券などの時価評価の総額に利息や配当金などの収入を加え、そこから運用コストを差し引いた金額を総口数で割って算出しています。多くの投資信託では、基準価額は当初1万口1万円で設定され、その後の運用結果により変動します。)によって金額及び口数が決まりますが、国内の株式や債券に投資するファンドでは申込日当日の基準価額が適用され、外国の株式や債券に投資するファンドでは申込日の翌営業日の基準価額が適用されます。

基準価額が確定すると、その翌営業日に販売会社より追加・解約確定連絡がきますので、その連絡を受けてバック・オフィスは元本の増加又は減少の処理をファンド計理システムで行います。また、追加・解約指図書を受託銀行に送付します。

利金・配当金の計上

利金については、通常は債券を取得する際に予め利率や利払日などの銘柄属性をファンド計理システムに登録しておくことによって日々自動的に未収利息が計上されます。

配当金については、国内株式の場合、予め価格情報会社等より予想配当金額に関する情報を入手し、当該株式の権利落ち日(株主として受けることができる権利を得る最終売買日の翌営業日)にファンド計理システムで未収配当金を計上します。また、外国株式の場合には、受託銀行から確定配当金額に関する情報を入手し、当該株式の権利落ち日にファンド計理システムで未収配当金を計上します。

利金・配当金の入金がされた際は受託銀行から委託会社に連絡が入るので、バック・オフィスはこれに基づいてファンド計理システムで入金の計上を行います。

マザー約定処理

ファミリーファンド方式のファンドにおいて、ベビーファンドはマザーファンドを通じて取引を行います。そのため、追加・解約でベビーファンドの資金流入が確定した後、それに応じてベビーファンドがマザーファンドを追加・解約する必要がある場合はその処理を行います。

時価評価

ファンドでは日々基準価額を算出しなければならないため、組入れ有価証券等はバック・オフィスにおいて毎日時価評価されています。通常、国内の有価証券については委託会社と受託銀行はそれぞれ取引所や価格情報会社から時価を取得していますが、外国の有価証券については委託会社が取得した時価情報を受託銀行に提供しています。また、価格情報会社から時価を取得することができない銘柄については、委託会社が買付けを行ったブローカーなどから時価を取得し、受託銀行に提供するケースもあります。

基準価額の算出

上記のような業務を経て、ファンド計理システムではファンドごとに日計表が作成され、当日の純資産額と基準価額が計算されます。基準価額は受託銀行においても別途計算されていますので、バック・オフィスは毎日これらの業務がすべて完了した時点で受託銀行と基準価額の照合を行います。この結果、両者の間で差異がある場合には双方で原因の調査を行い、1円単位まで合致させます。合致したら基準価額は確定となり、販売会社、投資信託協会及びメディアへ送信します。