上場準備時のショートレビューについて

ショートレビューとは

ショーレビューとは企業が上場の意思決定をした際に監査法人が行う企業調査の一つであり、短期調査・予備調査・クイックレビューとも言います。

監査法人等は株式上場を検討している企業に対して調査を行い、株式上場に向けての課題を洗い出します。通常は現地調査やヒアリングを規模に応じて2日~1週間程度で行い、報告書を調査後1週間程度で作成して企業に提出します。

株式上場をするためには証券取引所の審査基準をクリアする必要がありますが、ショートレビューでは上場基準からみた事業計画、財務基盤、内部管理体制、ディスクロージャーなどを整備する上での課題の洗い出しを短期間で調査します。

そのため上場準備会社はショートレビューを受けることで自社の現状を正確に把握し、上場までの要改善事項や全体像が見えてきますので、上場準備を効率的に進めることができます。

なお、ショートレビュー報告書は主に証券会社が上場までに必要とすることが多く、ショートレビュー報告書がないと証券会社が企業と契約しない場合もありますので、上場の際には基本的にショートレビューが必要となります。

ショートレビューを受ける時期

企業が株式上場をするには、約2年半から3年の準備期間が必要です。そのため、上場の目標年度から逆算して3期以上前にはショートレビューを受けて課題を洗い出し、体制を整備していくことになります。

監査法人によるショートレビューは、一般的に150万円~400万円程度の費用がかかりますが、調査の範囲などによって異なります。

ショートレビューを受けることによって、課題の洗い出しができますのでそれを基に上場プロジェクトチームを編成するとスムーズに準備を進めることができます。

ショートレビューの内容と事前準備

ショートレビューでは事前に企業と監査法人で打ち合わせを行い、企業はその打ち合わせに基づいて作成した資料を監査法人に提出します。監査法人は当該資料を確認し関係者にインタビューを行ったあと、調査結果を報告書にまとめて報告会が開催されます。ショートレビューの報告書の内容は概ね以下のとおりです。

・実施した調査の概要

・調査結果の概要

・上場審査(形式基準)における結果

・上場審査(実質基準)における結果

・会計処理基準について

・貸借対照表の個別勘定について

・損益計算書の個別勘定について

・営業損益分析について

・管理体制の整備状況について(経営計画、販売・製造・管理体制等)

・諸規定の整備状況について

・内部監査制度の整備状況について

・特別利害関係者等との取引状況について

・ディスクロージャー体制の整備状況について

・資本政策について

・株式公開までの準備スケジュール、等

 

また、ショートレビュー時に企業が提出する資料は企業ごとに異なりますし、追加提出依頼されることもありますが、主な資料は以下のとおりです。

・登記簿謄本、定款、社内規定、組織図、等

・株主名簿、役員一覧、役員及び主要株主との取引内容、取締役会議事録、等

・会社案内(パンフレット)、製品案内(カタログ)、等

・経営計画書、事業計画書、等

・過去3期分の財務諸表(決算書、事業報告書、税務申告書、勘定科目内訳書等)

・主要な販売先、仕入先、外注先一覧及び実績の推移、基本契約書、業務フロー

・勘定科目一覧、会計処理基準一覧、原価計算関係資料、帳票書式、等

会計監査を受けるための準備

ショートレビューを受けたあとは2年間の会計監査を受けることになりますが、ショートレビューの結果、要改善事項が多くなり想定以上に会計監査に入る前の事前準備に時間がかかる場合があります。

2年間の会計監査期間に入る前の体制準備期間をなるべく短縮するためには、日本公認会計士協会が「上場前の2年間の監査期間に入る前に準備しておきたい事項」として以下の項目を挙げていますので、事前にチェックしておくことが望ましいです。

・会計処理の根拠資料は検証可能な状態で整備されていますか?

・会計処理の根拠資料はすべて網羅的に保管されていますか?

・内容の不明な残高が勘定科目に残っていませんか?

・発生主義で会計処理を行うために必要となる情報は収集できますか?

・実地棚卸はきちんとやっていますか?

・在庫の受払記録は作成していますか?

・固定資産台帳に記載されている資産は実在していますか?

・原価管理を行うための体制は整っていますか?

・連結範囲の確定前に、整理すべき関係会社はありませんか?

・子会社でも連結決算に対応できるだけの体制が備わっていますか?

ショートレビュー前に、必ずしも上記のような体制が整備されている必要はありませんが、準備を進める際には監査法人の視点は参考なります。

 

いつでも上場できるような体制を整備しておけば、戦略的に最適なタイミングでの上場も狙えますので、上場の意思決定をした場合には早めに監査法人等に相談をして事前準備を進めることが重要です。