繰延税金資産の回収可能性の7ステップ

前回のコラムでは、回収可能性の基本的な概念、考え方について解説をしました。

繰延税金資産の計上は7つのステップを踏んだうえで行われるのですが、今回のコラムでは具体的にどういったステップを踏んで繰延税金資産が計上されるかについて解説します。

また、この7ステップの計上を理解する上で不可欠の概念である『スケジューリング』と『スケジューリング不能な一時差異』についても説明したいと思います。

1.回収可能性の検討に関する7ステップ

繰延税金資産の計上方法に関しては、『回収可能性適用指針』第11項に以下のような定めがあります。

以下の表の通りですが、7ステップに分かれており、この順番で検討を行う事により繰延税金資の回収可能性が判定されます。

回収可能性適用指針第11項
⑴期末における将来減算一時差異の解消見込年度のスケジューリングを行う。
⑵期末における将来加算一時差異の解消見込年度のスケジューリングを行う。
⑶将来減算一時差異の解消見込額と将来加算一時差異の解消見込額とを、解消見込年度ごとに相殺する。
⑷ ⑶で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、解消見込年度を基準として繰戻・繰越期間の将来加算一時差異(⑶で相殺後)の解消見込額と相殺する。
⑸ ⑴から⑷により相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額(タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の見積額を含む。)と解消見込年度ごとに相殺する。
⑹ ⑸で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、解消見込年度を基準として繰戻・繰越期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額(⑸で相殺後)と相殺する。
⑺ ⑴から⑹により相殺し切れなかった将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性はないものとし、繰延税金資産から控除する。

7つのステップは大きく分けて

①将来加算一時差異との相殺による回収可能性の判断(⑴~⑷)

②収益力またはタックス・プランニング

の2つに分けて考えることができます。

まず①についてですが、その回収根拠は将来加算一時差異となります。

⑴と⑵で見積もられた将来減算一時差異は、同様に見積もられた将来加算一時差異と⑶⑷で相殺されます。

⑶と⑷の違いは、⑶が同一年度であるのに対し、⑷が年度をまたぐ相殺であるという点です。

次に②についてですが、こちらの回収根拠となるのは収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得及びタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得です。

⑸と⑹の違いは、⑸が同一年度であるのに対し、⑹が年度をまたぐ相殺であるという点です。

⑸でも⑹でも相殺できなかったものは、⑺にもあるように回収可能性のない一時差異等として評価性引当額となります。

2.スケジューリング不能な一時差異に係る取り扱い

7ステップで解説したように、繰延税金資産の回収可能性検討に際しては『スケジューリング』を行います。

スケジューリングとは、法人税の益金損金が税法上認められるタイミングを予測・計画することで、法人税が益金・損金を認めるタイミングが特定・把握できる場合を『スケジューリング可能』、できない場合を『スケジューリング不能』といいます。

スケジューリング不能な一時差異について『回収可能性適用指針』には次のように記載されています。

次のいずれかに該当する、税務上の益金又は損金の算入時期が明確でない一時差異をいう。
① 一時差異のうち、将来の一定の事実が発生することによって、税務上の益金又は損金の算入要件を充足することが見込まれるもので、期末に将来の一定の事実の発生を見込めないことにより、税務上の益金又は損金の算入要件を充足することが見込まれないもの
② 一時差異のうち、企業による将来の一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等の存在により、税務上の益金又は損金の算入要件を充足することが見込まれるもので、期末に一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等が存在していないことにより、税務上の益金又は損金の算入要件を充足することが見込まれないもの

この適用指針の定義にもあるようにスケジューリング不能な一時差異には2種類あります。

一つは、将来減算一時差異ではあるものの、税務上の損金算入要件の充足時期が確定できないもので、回収・貸し倒れがまだ確定していない個別評価の貸倒引当金などがこれに該当します。

もう一つは、将来減算一時差異であって、税務上の損金算入要件の充足のために意思決定が必要であるものの、その意思決定が行われていないものです。

具体的には、非償却資産である土地の減損損失などが該当し、減損を税務上損金算入するためには取締役会などで売却の意思決定が必要であるものの、それが行われていない段階では損金算入時期を予測・計画することはできないためスケジューリング不能な一時差異となります。

さて、スケジューリング不能な一時差異のうち、将来減算一時差異については、原則として評価性引当額となりますが、将来減算一時差異についての税務上の損金の算入時期が明確となった場合には、その時点で回収可能性を判断して繰延税金資産を計上します。

スケジューリング不能な一時差異のうち、将来加算一時差異については、将来減算一時差異の解消見込年度との対応ができません。

したがって、スケジューリング可能な将来加算一時差異と異なり、繰延税金資産の回収可能性の判断に時の将来減算一時差異との相殺はできません。

ただし、固定資産圧縮積立金等の将来加算一時差異については、企業が必要に応じて積立金等を取り崩す旨の意思決定を行う場合、将来減算一時差異と相殺することができるものとされています。

これは、積立金の積立時に計上した繰延税金負債を取崩時に将来減算一時差異と相殺できないと、計上時と取崩時の会計処理の一貫性が崩れるからと思われます。