サブリースの会計処理に関する理論的背景

ここまでセール・アンド・リースバック取引のような特殊なリースを見てきましたが、今回も同様に特殊な形態のリース取引を取り上げます。

今回のテーマは『サブリース』で、その会計処理の理論的背景を以下見ていきたいと思います。

さて、サブリースについては、不動産投資などに詳しい方であればもしかしたら耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

サブリースは、オーナーからサブリース会社が不動作を一括で借り上げ運用を行うスキームで、スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件(※)などで一時期社会問題となりました。

(※)かぼちゃの馬車事件

「賃料30年保証、利回り8%」という触れ込みで1棟1億円の「かぼちゃの馬車」をスルガ銀行が融資して不動産投資家に販売したものの、サブリース会社が数年で破綻し、ローン返済ができなくなった投資家が続出した事件

上記のような社会問題化した事件のせいなどもあって悪いイメージもあるサブリースですが、そのスキーム自体に問題がある訳ではなく、上場企業においても利用されるケースは普通にあります。

今回のリース基準の改正においても利用が広がるサブリース取引実務の実情を反映し、サブリースの会計処理について整理がされています。

1.サブリース取引の定義

まずは、サブリース取引の定義について見てきます。

企業会計基準適用指針公開草案第 73 号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」によればサブリースとは、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引となっています。また、当初の貸手と借手の間のリースを「ヘッドリース」といい、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」といいます。

少し整理すると、サブリースは一度リースしたものをさらにリースする取引です。

リース取引が2本走っており、まずは当初の借手と貸手との間でリース取引が行われ、このリース取引でリースした資産を、当初の借手が別の第三者にリースをするというスキームです。

冒頭で説明したかぼちゃの馬車事件で言えば、当初の貸手が損失を被った投資家で、当初の借手が破綻したサブリース会社です。

投資家は銀行から融資をうけて不動産を購入し、それを破綻したサブリース会社がリースをします。

破綻したサブリース会社は、第三者に対してこの投資家から借上げたリース物件を再度リースに出して収益を上げるというスキームを描いていましたが、目論見通りの運用益が出ずサブリース会社が破綻したことで投資家のリース物件が焦げ付いたというのがかぼちゃ馬車事件でした。

また、ヘッドリースは当初の借手と貸手との間のリース取引なので、損失を被った投資家と破綻したサブリース会社との間のリース取引がヘッドリースということになります。

そして、もう一つの方の破綻したサブリース会社によるリース契約をサブリースといいます。

中間的な貸手は、ヘッドリースの借手なので破綻したサブリース会社です。

サブリースにしろ、ヘッドリースにしろ、リース取引である以上は会計処理上は原則通りの処理をするだけなのですが、リースが2本走っているので、特に中間的な貸手に関してはリースの借手であると同時にリースの貸手であるという2面性が存在するので注意が必要です。

2.サブリースの会計処理の理論的背景

サブリース取引については、ヘッドリースとサブリースの契約は別個に交渉されているのが一般的です。

中間的な貸手は、ヘッドリース取引において借手としてリース料の返済義務を負っています。

そして、当初にリース取引においては原資産のリースの借手、サブリース契約においてはリースを行った当事者であるため、リースの借り手であると同時にリースの貸し手でもあるという両建てのポジションを有することになります。

ヘッドリースにおける中間的な貸手の返済義務は、一般的なサブリース契約においてはサブリースを行うことによって消滅することはありません。

つまり、ヘッドリース契約はサブリース契約に遡及しないので、 2 つ契約は別個の契約として取り扱えばよいということになります。

したがって、中間的な貸手はヘッドリースとサブリースの2つのリース取引を通じて、借手と貸手の両方の会計処理を行うことになります。


なお、新たな適用指針の審議の過程では、一部のサブリース取引について、サブリースの締結後もヘッドリースが有効であることからサブリース取引には該当するものの、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うことが適切ではない場合があるのではないかとの意見もあったそうです。

こうした議論を受けて、企業会計基準適用指針公開草案第 73 号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」では、サブリース取引の例外的な定めとして、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いの記載が追加されました。

次回、サブリースの具体的な会計処理を見ていきますが、このヘッドリースとサブリースを別個の契約とみなして、リースの貸手と借手の会計処理を別個に行うという基本的な考え方は必ず理解しておいていてください。