税効果の一時差異とは何か

前回のコラムでは、税効果会計が必要となる理由として税務上の利益と会計上の利益の違いがあり、その原因として制度会計と税務会計の目的の違いがあるという解説をしました。

今回も前回に引き続き、税効果会計の理解を深めるため関連論点の解説をしていきたいと思います。

今回は、前回の内容を踏まえた上でより専門的な内容となりますので、何度も熟読して理解していっていただければと思います。

1.損金と益金及び課税所得について

税務上の利益と会計上の利益に違いがあるという点は前回のコラムでも何度も解説した点になりますが、ここで損金と益金の概念について説明します。

便宜上、『税務上の利益』という用語を用いていますが、税務上の利益と会計上の利益はそもそもの概念が違うので、その用語も異なってきます。会計上の概念と対応するそれぞれの税務上の概念は、

税前利益 = 課税所得

収益(売上) = 益金

費用 = 損金

となります。

会計上の利益と同様、『益金 ー 損金 = 課税所得』となります。

前回説明したように、損金と費用は対応する概念ではありますが、賞与引当金などの見積がほぼ含まれないなど、収益と益金、損金と費用と中身は大きく異なるという点には注意しましょう。

2.一時差異と永久差異

税効果会計が必要となる理由としては、税務上の利益と会計上の利益の相違がありました。

これは、資産と負債の貸借対照表の側面から見ると、当期の事象に起因する将来の税金支払見込額または税金還付見込額が、税務上の利益をベースとした場合に適切に計上されないということになります。

これは、言い換えると会計上の利益と税務上の利益の計上にはズレがあるため、このズレが貸借対照表上の資産と負債の差額となって現れているということになります。

この資産と負債のズレですが、実は永久差異と一時差異という2つに分けることができ、資産と負債のズレの原因が一時差異であるか永久差異であるかによって税効果会計の処理が違ってきます。

それぞれの定義ですが、

一時差異:制度会計と税務会計の認識時期のズレによるもの

永久差異:制度会計と税務会計の定義上のズレによるもの

一時差異は、会計上も税務上も費用であることは変わりないものの認識時点が異なることにより発生する差異で、発生の翌期以降に解消されて通期で見たときの税務上の利益(課税所得)と会計上の利益(税前利益)は一致します。

一方の永久差異は、税務上は利益である/利益でないのに、会計上は利益でない/利益であるようなもので、そもそも定義が異なるために差異が解消されることはなく、通期で見たときの税務上の利益(課税所得)と会計上の利益(税前利益)は一致しません。

3.一時差異と永久差異の具体例

一時差異と永久差異の概念上の説明としては上で述べた通りですが、やはり実例がないと分かりにくいと思いますので一時差異と永久差異の具体例を次に挙げていきます。

【永久差異の具体例】

  • 交際費等の損金不算入額
  • 受取配当金の益金不算入額

永久差異の具体例として代表的なのが上の2つです。

交際費は会計上は当然に費用となりますが、税務上は冗費・濫費(経費の無駄遣い)を抑制することを目的にその使用に上限が設けられています。(厳密には大企業と中小企業で異なりますが、詳細は国税庁のHPなどでご確認ください。)

税務上否認された交際費が、税務上の経費として認容されることは永久にないため『永久差異』となります。

受取配当金の益金不算入についても同様です。

受取配当金が益金不算入となるのは、同一の利益に対しての二重課税を防ぐためです。 株式の受取配当金は会社の利益剰余金から支払われますが、 このとき、株式を発行する株式会社は既に法人税を支払っているため、受取配当金に課税してしまうと同一の利益を対象に二重の課税となってしまうからです。

交際費と同様、否認された受取配当金が税務上の益金として認容されることは永久にないため『永久差異』となります。

【一時差異の具体例】

  • 税務上認められない棚卸評価損等
  • 貸倒引当金の損金算入限度超過額
  • 退職給付引当金
  • 賞与引当金
  • 積立金方式による圧縮積立金

一時差異の具体例としては、上記のような項目があります。

見ていただいても分かる通り評価損や引当金といったものが一時差異として挙げられることが多いです。これらに共通する要素としては、『見積』項目であるという点が挙げられます。

例えば棚卸評価損は、実際に販売して損失が出たわけではなく、状況変化により明らかに取得原価を下回る金額でしか棚卸資産を処分できない状況を会計的に反映したものです。

会計上は正しい処理ですが、税務上はあくまで見込であり損失があったことを立証するような事実はありません。(これは評価損だけではなく、将来の蓋然性の高い費用を見込んだ引当金についても同様です。)

課税の公平という観点から税務上はこういったものを認容することは難しく、会計と税務の差異となります。