ソフトウエアの会計処理について

2/17のコラム『研究開発費の会計処理について』で研究開発費についての解説をしましたが、これと密接に県警する論点に「ソフトウエアの会計処理」があります。

研究開発費を行った場合に、一定要件を満たすと資産計上できるようになりますが、そうした会計処理を行った場合BS上『ソフトウエア』となることが多いためです。

また基準上もこれらは一体として扱われており、会計理論上ソフトウエアと研究開発費は近接論点と言えます。

近年のIT化の進展とともに、ソフトウエアの資産性(減損の要否)などの論点は非常に重要になってきています。

今回から複数回にわたり、このソフトウエアの会計処理について詳細に解説をしていきたいと思います。

1.ソフトウェアの定義

昨今のIT社会、そしてAI社会においてはコンピューターやプログラム、ソフトウエアに依存する割合はますます高まっています。

これを受けて企業側でも資産の大半がソフトウエアや知的財産といった無形資産という会社も出てきています。

この社会におけるソフトウエアの重要性がますにつれて、会計上のソフトウェアの定義も企業の公表する財務諸表に大きな影響を及ぼすことになります。

ここでは、そうした背景も踏まえ、ソフトウェアの定義について改めて確認をしていきたいと思います。

ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいいます。(研究開発費等に係る会計基準より抜粋)

具体的にはコンピュータ・ソフトウェアをいい、その範囲は次のとおりとなります。


① コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム
② システム仕様書、フローチャート等の関連文書

留意すべき点としては、実際に作動するプログラムだけでなく、仕様書やフローチャートといった関連文書もここに含まれる点です。

これは、ソフトウエアはその性質上物理的実態がなく、仕様書やコードがあれば再現可能であること、(オープンソースのソフトウェアの場合などで)むしろ仕様書やフローチャートの方に価値がある、または仕様書やフローチャートがないと実質的に機能しない場合などがあるため、このような広範な定義となっていると考えられます。


また、類似の概念として「コンテンツ」についても「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、「実務指針」とする)で定義がされています。

実務指針によれば、コンテンツは、「ソフトウェアとは別個のものとして取り扱い、本報告におけるソフトウェアには含めない」とあります。


一方で、ソフトウェアとコンテンツが経済的・機能的に一体不可分と認められるような場合には、両者を一体として取り扱うことができますので、実態としてどういった形で機能しているかをその証憑とともに確認していくことが重要です。

2.ソフトウェアの概念に関する深堀り

ソフトウェアとコンテンツの定義について見ていきます。


実務指針の定義によれば、ソフトウェアがコンピュータに一定の仕事を行わせるプログラム等であるのに対し、コンテンツはその処理対象となる情報の内容となっています。

コンテンツの具体例としては、データベースソフトウェアが処理対象とするデータや、映像・音楽ソフトウェアが処理対象とする画像・音楽データ等がこれに該当します。

ソフトウエアが何らかのアウトプットを直接、間接に生み出すツールであるのに対し、コンテンツはアウトプットそのもの(≒情報)である点に大きな違いがあります。

この両者の違いを踏まえると、ソフトウェアとコンテンツとは別個の経済価値を持つものであると考えられ、コンテンツはソフトウェアに含めないこととした実務指針の判断は妥当といえます。


また、ゲームソフトは昨今ますますその社会的・経済的な重要性が増してきていますが、研究開発費の基準や実務指針における位置づけとしては、一般的にソフトウェアとコンテンツが高度に組み合わされて制作されるという特徴を有しているものとされていますので、関連業界の方は覚えておきましょう。

3.制作者と購入者の会計処理について

ソフトウエアの会計処理を理解する前に、ソフトウエアの会計処理の前提として制作した場合と購入した場合で会計処理の考え方が違ってくるのでこれについて解説をしていきます。

まず大まかにソフトウエアの制作者と購入者の会計処理の基本的な考え方の違いですが、この両者は、下記で見るように必ずしも対称的な処理が行われるわけではないため注意が必要です。

まず、制作者においては、コンテンツとソフトウェアは別個の経済価値として把握可能であり、両者は別個のものとして原価計算上も区分することになります。

しかし、両者が一体不可分なものとして明確に区分できない場合(例えば、ゲームソフトなどが典型ですが、両者が不可分一体であったりするため、一方の価値の消滅が他方の価値の消滅に直接結び付くような場合)には、その主要な性格がソフトウェアかコンテンツかを判断してどちらかにみなして会計処理をします。

また、購入者においては、ソフトウェアとコンテンツを明確に線引きをすることは概念的には可能であっても、実際の適用においては混乱を招くことが予想されるため、実務上は一体処理を認め、その主要な性格に応じてソフトウェアかコンテンツとして処理することが考えられます。

しかし、ソフトウェアとコンテンツの経済価値を明確に区分できる場合には両者を区分して会計処理することを妨げるものではありません。

このように両者の性質・性格の違いが具体的な会計処理にも影響してきますので、きちんと理解しておきましょう。

次回は、ソフトウエア会計の典型論点である市場販売目的のソフトウエアの会計処理について、解説をしていきたいと思います。