自社利用ソフトウエアの会計処理について②

前回に引き続き、自社利用ソフトウエアの会計処理について解説をしていきたいと思います。

前回は、自社利用ソフトウエアにおいては将来の収益獲得または費用削減が確実であると見込まれる場合には資産計上すること、その趣旨、そして、将来の収益獲得または費用削減が確実な場合の具体例について見ていきました。

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、「実務指針」とする)において、将来の収益獲得または費用削減があくまで例示としてしか示されていない理由ですが、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる具体的な態様は様々であると考えられることから、自社利用のソフトウェアの資産計上要件を包括的に掲げることは困難であり、ソフトウェアが資産計上される場合の一般的な例を示すことが、より適切な会計処理につながると考えられたようです。

1.自社利用ソフトウエアの計上時期について

一般的な会計処理の論点して、『認識』と『測定』があります。

『認識』とは、いつ会計処理を行うのかであり、『測定』とは、どのような金額で計上するかということになります。

自社利用ソフトウエアの会計処理においては、『測定』の方は、自社で制作した場合であれば原価計算によって、購入であれば購入原価がそれに該当します。

一方で、『認識』の方はどうでしょうか?こちらはやや複雑であるため、改めて解説をしていきたいと思います。

まず結論から言うと、自社利用のソフトウェアに係る資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定することになります。

そのような証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられます。

逆に言えば、将来の収益獲得または費用削減が確実とはいえない中で費消された費用については、研究開発費と同様に即時の費用処理となりますので注意が必要です。


一方で、自社利用のソフトウェアに係る資産計上の終了時点は、実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点となり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定します

そのような証憑としては、例えば、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等が考えられます。

資産計上を終了する時点の取扱いについては、メンテナンス作業へ切り替わった時点とすることも検討されたようです。

しかしながら、終了時点を明確に特定するには不十分な基準であり、恣意性が大きく裁量的な会計処理の余地があるため、資産計上の終了時点の決定に際しては、具体的な証憑に基づいて判断すべきという結論になりました。


なお、制作段階により区分する方法も検討されましたが、ソフトウェア制作には多様な制作実態が存在し、それらを明確に区分することは困難であり、結果として実態に合致しなくなる可能性が高いと考えられたため、採用されませんでした。

2.購入ソフトウェアの設定等に係る費用の会計処理

有形固定資産の購入を行う場合、付随費用も含めて資産の金額に含めていrます。

では外部から購入したソフトウェアについて、そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用についてはどうなのでしょうか?

この段落では解説をしていきたいと思います。

このような場合には、ソフトウェアでも例外はなく有形固定資産と同様に、購入ソフトウェアを取得するための費用として当該ソフトウェアの取得価額に含めることになります。


ただし、これらの費用について重要性が乏しい場合には、費用処理することができる点には留意しましょう。

完成品のソフトウェアを購入して利用するまでには、ソフトウェアの導入に係る費用やソフトウェアを利用する環境を整えるための費用が発生しますが、これらの費用に関する会計処理については、以下のように考えることが実務指針の中で述べられています。


まず、完成品のソフトウェアを購入し、社内で利用する場合には、大きく分けると次の二つがあるのでそれぞれの場合を見ていきます。


(1) 購入ソフトウェアをそのまま導入する場合
完成したパッケージソフトウェアをそのまま導入するケースで、追加の作業は簡単な導入作業程度です。


(2) 購入ソフトウェアの設定等が必要になるケース
完成したソフトウェアを購入する場合でも、例えば、財務会計ソフトの科目マスターの設定のように設定作業が必要となる場合、又は自社の仕様に合わせて画面や帳票などを修正する場合などがあります。これらの作業は、自社で行う場合と外部委託する場合があります。


もし、⑴のように購入したソフトウェアをそのまま導入する場合(例えばPCソフトのようなビジネスソフトなどを購入するような場合)には、導入費用は一般的にはほとんど発生しないと考えられます。このような場合には、付随費用の論点は特にありません。


一方で、外部から購入したパッケージソフトウェアに対して設定作業又は自社の仕様に合わせるための付随的な修正作業等の費用は、購入したソフトウェアを使用するために不可欠な費用と考えられます。

したがって、有形固定資産の取得に要する付随費用と同様に、ソフトウェアの取得価額に含めるべきであると考えられます。